- 里引き編:1日目 その4 -
《再会》

まだ夕飯には少し早いし、どうしようか悩みましたが、町を歩きながら山出しの時の約束を果たすことに。
友人には申し訳なかったのですが「初日にきます」と言ってしまいましたしね……。

というわけで、ゆっくりと坂を下り、下諏訪の駅前へ向かいます。

ゆっくりと、とは言うものの、長持ちの行列が優先ですから、人が通れる道はわずか。
はぐれないようにしながら、両側の屋台を眺めつつ、冷やかしつつ、多少押されながら歩きます。

駅前に行くまでの間に見かけた郵便局のテントをささっと眺めては「違う」を2度ほど繰り返し、着いたのは下諏訪の駅前ロータリー近く。
駅前の駅前。
その店先にいらっしゃいました。

「こんにちわ!!」
「あぁぁぁぁ、よく来てくれました!! ちょっと待ってくださいね!」

というと、あわてて裏へ。

きょとんとしていると、若いお兄ちゃんの局員さんが

「なんか、お土産があるらしいんで」
「「えーっ!?」」

そこに戻ってきた局員さん。

「先日、たくさん買っていただいたのに、何も渡せなかったんで……」


一緒にいる友人の分まで!

いやいやいや。
あの時、そんなつもりで言ったんじゃなくって……
あぁぁぁぁ、ごめんなさいっっっっ!!

でも、ありがとうございます!

「春宮には、行った?」
「あ、えぇ、そちらから今戻ってきたんですよ」
「あのね、色紙の書家の先生のお宅の前で郵便局が出してるんですよ。良かったら行ってみてください」

その言葉を聞きながら、私は荷物をがさごそがさごそ。

「この先生ですか?」
「うわ、すっげー、よく持ってきましたね!?」

実は、神社にお返ししようとして持ってきたのです。
本当は、山だしの時に持ってこようと思っていたのですが、すっかり忘れていて、今日に。
ところが……

うわぁぁぁぁぁ!!!!
ありがとう、ありがとう! ありがとう!!

へっ?
こ、この驚きと、お礼の言葉は、な、なんだ!?

「木っ端ついてるよ〜」

あ、そっか、このお兄ちゃんは6年前はまだ郵便局に入っていなくて、これを観たのは初めてだったのね。

木っ端、というにはあまりに立派な……見ていただいた方が早いですね。


色紙の左上に付いている木片が木っ端です。
とても、木屑、とはいえないくらい立派でしょ?

「大事に飾ってくれて、ありがとう!! よかったら、っこれ、持ってってください」

と、差し出されたのは、おんべが2本。
おんべ、というのは、御幣とも書き、神様が宿る、と言われるものです。
イメージとしては、白い紙がたくさんついた棒を神社の神主さんが持っていることがあると思うのですが、そんな感じ。(実際のおんべは木を薄く削ったものを束ねています)
頂いたものは、観光客向けに販売されているものなので、ぽんぽん(ビニールテープで作るヤツ)を和紙で作ったものを棒の先にくくりつけたそんな感じです。

6年間ずっと持ち続けていたことがうれしかったんだろうか。

でもさ。
6年間、いいことあるよ、って言われたもの、むげに扱いますか?
むげに扱った瞬間、いいことなくなるような気がしません?(笑)

丁寧にお礼を言います。でも、いろいろ頂いたのに、何にも買わなくてほんとにごめんなさい!!

さて。
今からは、春一の建て御柱を見に行くとしますか。

では、春宮へ、もう一度。

←prev 目次に戻る next→

© 1997 Member of Taisyado.