- 里引き編:1日目 その5 -
《再会 その2》

春宮へ向かいつつ、目線は、きょろきょろと、郵便局探し(笑)
見つけましたよ、いくつか。

そのうちの1つで、局員さんの声が聞こえました。

「木っ端、ありますよ!!」

長机の上に乗っていたのは、間違いなく、木っ端。
思わず、足を止めて見入りました。
確か、6年前も、色紙を売っていたのは、駅前のお店だけ。
ということは、ひょっとして……

まさか!
局員さん、ここで木っ端売ってるって言いたかったんじゃ!?

なんだか、どきどきしてきました。
そんな私に、友人が声をかけます。

「どうしました?」
「いや、木っ端が……」
「もう、あとちょっとしかないよ!」

局員さんが笑顔で話しかけてくれます。

「あの……前回、色紙を買ったんですけど……」
「おっ! 前回、来てくれたんだね! ありがとう!! よし〜」

と言いながら、がさがさ。

「やっぱ、下諏訪のがいいだろう! あげるよ!!」

と購入者特典のクリアファイルを。


「えっ、えーーっ!!」
「よかったら今回も何か買ってって!」

屈託ない笑顔です。

あれ??? この人、どこかで見たことがあるような……。
あっ!!
6年前、駅前のおじさんと一緒に売ってくれた人じゃないか!?

そう思ったら、自然に色紙を……。

「これですよね!」
うおぉぉぉぉぉぉぉ!!

すごい驚きようです。
こちらがびっくりです。

「そうそう、これこれ! これだよっ! なんで持ってきたの?」
「いや、6年経ったし、返そうかと思いまして。」
「返さなくていいんだよ、御柱ってそういうものだからね。ずっと持って大切にしてね。」
「おねえさん、どこから来たの?」
「名古屋からです」
「名古屋!! 遠くから、それ持って来てくれたんだね! ありがとう、ありがとう!!」

勘違いして、名古屋から持ってきた色紙。
それだけなのに、こんなに「ありがとう」言われるなんて……。

「前回もここで買ったでしょ? 俺が売った、間違いない!」
「え、えぇ。『氏子さんだって先を争って貰うものだから、きっとご利益あるからね』って。」
「で、いいことあった?」
「ここに6年後また来ることができて、みなさんにこんなに良くして頂いて、それで十分いいことありました!」

1000円の色紙です。
それだけで、こんなに多くの人とつながった、それだけで十分。

「ここね、この字を書いた先生のお宅なんだよ!」
「おい、先生呼んできたらどうだ!」
「おぅっ! あ、今から、この文字を書いた先生を呼んでくるからね!」

言うが早いか、室内に飛び込んで行っちゃいました。
そして、飛び出して出てきて、家の裏側に。

「あそこまで呼びに行ったら、もう先生来ますから。」
「すみません……」

だんだん、事が大きくなってきた(笑)
額にも入れず、そのまま飾ってたから、もう反っちゃってるんだけど。
そんな日焼けした色紙を手に、呆然としつつ、その場に立っていました。

しばらくして、書家の先生登場。

「確かに、私の字だわ。前回書いた奴だね」
「えぇ、前回、先生に書いてもらったものですよ。」
「確か2種類あったんじゃないかな?」
「あ、そうですね。私はこちらの方が好きだったので、こっちを選びました。」
「そうかね、ありがたいねぇ〜。木っ端もついてるし。」
「いいことあるって言われて、持ってきてよかったです。名古屋から来た甲斐があります」
「何、名古屋からわざわざきてくれたの? それは、私の本、持ってって!」

わわわ、ほんとに大事に(笑)

書道の会報を頂き、記念写真に収まった後、お別れの言葉は……。

では、また7年後!

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