- 里引き編:1日目 その3 -
《秋宮へ》

このまま一日中木落としを見続けるわけにもいかないので、曳行路を通って春宮へ戻る。

『有ちゃん、今の柱、大きかったね〜』
『うん。下社の中では一番大きい柱なの。だから、秋一っていうと、みんなちょっと違う感じなんだ。』
『違う感じって?』
『うーーん、うまくいえないんだけど……う〜ん……』

有ちゃんの代わりに説明しよう。

秋一には、特別な思いが詰まっている、と言えば分かりやすいだろうか。

曳行の担当は、下社では固定だが、上社では毎回くじ引きだ。

諏訪市出身の方に聞いたところ、くじ引きで「本一」を引き当てた大総代(その地区の祭りの責任者)は、末代まで称えられるらしい。
だが、「前四」を引いてしまうと……。
氏子さんたちをもてなしてなだめて……大変らしい。

つまり、それだけの想いが「本一」には詰まっているということだ。

上社の「本一」にあたるのが、下社の「秋一」。
そうやって考えると「秋一」にも特別な想いがつまっていそうでしょ?

春宮から秋宮へ向かう。

『この辺り、お兄ちゃんの家があるんだぁ〜』
『じゃ、有ちゃん、挨拶に行ったら?』
『そうだね! うーん、うーん、でも、どこだったっけ?』

……。

春宮〜秋宮の間は、住宅街だ。
中山道沿いには、古くからの情緒ある町並み、1本奥に入ると新旧混ざった家並みを楽しめる。

有ちゃんが来たのは、まだちっちゃい頃のようだから、わからないのも無理ない……そういうことにしておこう。

「ここまで来れば、もう秋宮は見えてるよ」

今、通りすぎたのは、児湯。
下諏訪の三名泉とも呼ばれるお湯で、子宝に恵まれるとも言われる。

ここまでくれば、秋宮はほんと目と鼻の先。

照りつける日差しがずいぶん暑くなってきた。

《秋宮到着》

手水を探すのに手間取って、秋宮を一周(滝汗)。
下諏訪駅前から秋宮までの参道にも両側には縁日の屋台が立ち並ぶ。
それは、境内の直前まで続き、いや、境内の駐車場側にも立ち並び、まったく手水が見えない(笑)。

仮設の拝殿に向かい、無事参拝終了。
祭りの空気だけれど、やっぱり、秋宮の空気が一番自分にしっくりくる。

お参りの後、友人がお箸やお守りを購入。
授与所の前で待っていると、空中から、小さな葉っぱがぶつかった。
周囲にはまったく樹がないのに。

「きっと、それは祝福ですよ」

確かに、そうかもしれない。
秋宮、ちゃんと来たよ、そう心の中で唱えながら、かばんにしまった。

《昼食》

秋宮をでると、照りつける日差しがまぶしい。
歩いていると、体はだんだんと熱くなっていった。

秋宮の目の前にある大社煎餅を買った後、お昼をどうしようかと考えながら歩いていた時。
見つけてしまった。
アイスクリームの看板を。

「カリンアイス、だって??」
「……ワサビアイスもありますけど……」

……。

「……とりあえず、先にご飯にしよう。」
「後で確認しに行きましょうね!」

ということで、判断保留(笑)。
秋宮の参道、八幡坂から大社通りへ出た。

実は、この時期。
普通の観光客が店内で座って食べられるお店を探すのはちょっと難しい。

この時期はお店が地区や企業の里引きお宿(休憩所)に貸し切られることが多いからだ。

おそばやさんにしよう、と考えていたんだけど、案の定、お宿に。
というわけで、今回使ったのが食祭館の中にあるお店「食祭」
リンク先は、食べログにしてありますので、味やお店の情報などの詳細は、レビューでご確認を。

私が先に食べ終わり、ちょっと携帯をいじりながら、友人を待つ。
あるものに箸をつけようとしたので、

「辛いよ!」
「……辛いですね……うわっ」

水を飲み始める友人。
口に入れたときも辛いのだが、かめばかむほど辛子がきいてくるという、ちょこっとお酒のつまみに、というのが一番だね、という、食祭館おすすめの商品。

その名は「からし三撰きのこ」。

からし系の辛いのが好きな方、ぜひ、日本酒のおつまみにどうぞ〜。
さて、ゆっくりと歩き疲れた足を休めながらご飯を食べたら、15時!

というわけで、再度、ゆるやかな坂道をあがり、先ほどのお店へ。

《アイスにチャレンジ!》

大きさを確認して、アイスクリームを1種類ずつ購入。

えぇ、カリンアイスとワサビアイス

見た目、かわいいんですよ。


手前がわさびで、奥がカリン。
なんだか、和風な感じでしょ?

「いっただっきま〜す♪」

ぱくっ。

「さっぱりしてておいしい〜♪」

という友人の声を聞きながら、おそるおそる口に運んだわさびアイス(笑)。

「どうです?」
「……ワサビだ。」
「え?」
「いや、おいしくないわけじゃなくって、ワサビなんだよ(笑)」

辛いのに、甘いんです。
ワサビの味、するんですよ、ほんとに。

「じゃ、じゃ、お口直しで」

とアイスを交換して、一口。

「すっごく、あっまぁ〜い♪」
「わ、ワサビだ……」

二人して笑いましたとさ。

それからしばらく、アイスをチェンジしながら食べます……食べ終わると、時計の針がもうすぐ16時を指そうかという時。

少し暑さも和らいで、歩いていても風を感じるようになってきました。

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