8.
GM美術館の館長は驚いている。
有子「すみません。そうさせて下さいぃ〜。」
GM/館長「仕方ないねぇ〜。」
愛美「泊まり込みで見張りですよ。」
GM泊まり込むって事でいいとして……江島さん、窓のところで見張っていると、見覚えのある先生が通っていくのが分かるけど。
愛美どっちかな〜〜?
GM東先生です。君を見て手を振って、また去っていく。
愛美みんなに「東がいたけど……!?」
有子「ひ、東先生が?」
愛美「手振ったよ、私に……何で知ってるの? ここにいるって?」
GM君を見て気づいただけかもしれない。それにしては、いやに帰りが遅いけど。じゃあ、一気に朝に持っていっちゃいましょう。
有子は〜い。
愛美どうぞ。
GM美術館の中にいるんだよね?
この後、延々どこにいるのかでもめる。
愛美は小部屋の中を、鬼堂は小部屋の外を提案。
有子に決定権が渡された。
一応、小部屋の中にいることは決まるものの、絵を置いておくか、持っているかで、鬼堂と愛美の意見が対立。
確かに魔術師を一応でも信用している愛美と、頭から信用してない鬼堂との間で意見が食い違わない方がおかしい。(苦笑)
愛美結局、みんな小部屋の中にいて、絵は布にくるんで隠します。
GM(いい加減疲れたよっていう声で)そうすると、気になる絵があるよ。
有子気になる絵?
GMまだ完成途中の絵だね。
有子裏の名前とか見て……。
GM滝之水の名前が書いてある。
有子それ、何の絵?
GMん? 美花ちゃんの絵。
有子「こ、これ……。」
愛美「これを作ってたんだね、きっと。どうする? この絵、守る?」
鬼堂&有子「う〜ん。」
これ以上考えたら、何時間あっても終わらない。
愛美布かぶせて押し込んで隠すことは出来る?
鬼堂当初守ろうとしていた絵と一緒に?
有子&愛美うん。
GM……まあ、いいでしょう。
パタン。
美術館の扉が開いたようだ。
――ここへ来るまで、あと数秒もかかるまい。
三人は顔を見合わせ、頷いた。
パタパタパタ……。
3人くらいの足音がする。
――来た……。
GM「それでは。」気取ったような男の声がするよ。
愛美私は何も言わないで、みんなの方を見るけど。
有子&鬼堂……。(無言)
GM/魔術師「……<奇跡>を始めるとしよう。が、その前に少し面白い物を見せなくてはならないな。」
コツコツコツ……。
愛美来た来た。
GMそっちの方に歩いてくるような音がするよ。
有子構えてる。
GM質問! 鍵は掛けましたか?
愛美コツコツコツ……って聞こえた瞬間に、鍵かけようか(笑)
有子(笑)
GMそりゃ、音、聞こえるよ。絶対。
愛美いるよ、みたいな。
GMそれじゃ、少しの間無言の反応(笑)があって、トントンとかノックしてくるけど(笑)。
愛美みんなの方を見てみる。
GMもう一度、コンコンって音がするよ。
愛美開けるよ、っていう意志を示してみるよ。
有子頷く。
愛美ガチャッ。
――……?
向かって左から、人影が一つ、ふっと出てきた。
「いらっしゃい、<魔術師>。」
「お早いご登場だったな。」
<魔術師>の目に、一瞬、驚きが宿った。
「すまないが、そこを通してもらおう。」
「何を、お取りしましょうか。」
冷静に愛美は言い放った。
――いざとなれば、どこからかは逃げられる。
彼女を支配していたのは、開き直りに近い感情だった。
「絵を一枚。」
「どの絵でしょう? ここにはいっぱい絵がありますわ。
お取りしますから、おっしゃって下さい。」
自分の背後に、射るような視線を感じた。
――鬼堂くん、か。絵を渡すな、ってことでしょうね。
つい、笑みがこぼれてしまいそうになる。
――あれじゃ、能力持ってなくても心が読めてしまうわ。
「言わなくても、分かっているだろう。」
「油絵ですか、それとも、水彩ですか。」
「無論、油絵だ。……覆いは外すな。」
「どなたに見せるおつもりで?」
「あの二人に。」
<魔術師>のステッキの先には滝之水高雄と美花がいた。
――なるほどね……。
愛美には、<魔術師>の真の意図が分かった。
彼の起こす<奇跡>が何であるのか。
――信用するわ、<魔術師>。あなたを。
愛美悪いけど、私は絵を持っていこうとするよ。止めるなら言ってね。
有子いや……。
鬼堂止める。
愛美止まるけど。
鬼堂「奴を信用できるのか?」
愛美「私は借りがあるから。」
鬼堂「助けてもらった借りか?」
愛美「そう。」と言って、油絵を持っていくよ。
有子うん。
愛美どうするの? 鬼堂くんは。
鬼堂くうぅっ……。<魔術師>の後方に回る。出来るかな?
GM彼は何の抵抗もしませんよ。
愛美回れたのなら、そのままトコトコと。
鬼堂木刀、準備。
GM君(鬼堂を示す)の方は一瞥もしないで「物騒だな。」
愛美困ったな……
「何にでもそれなりの準備は必要なものです。それでなくては私たちがここにいる意味もないでしょう。」
GM/魔術師「ま、そうだろう。」
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