- 2日目 -
8月15日 その弐

花火の後、親切な人に懐中電灯でこちらを照らしていただいたので、片付けるのが少し楽になりました。刺さったままにした釘もありますが。

片付けた後、夜店を見ながら、駅までみんなで歩いて行きました。何か食べるものを買っていこうということになるのは、『お約束』でしょう。

「みんな、焼きそば食べる? 食べる人?」

と言った人が焼きそばを買いに行くのは、ごく当たり前のことです。

「おじさん、大盛りにしてね。」

店のおじさんがこの声に応えてくれて、本当に大盛り。輪ゴムを二本かけても、まだふたが閉まりません。

「本当にサービスしてくれたんだ。おじさん『いい人』だー。ありがとうございます。」
「わぁー。すごい大盛り。大サービスしてくれたんだぁー。ありがとう!」
「ほら、お姉さんは、箸持っていき。」

と言って、おじさんはわたしに七本の割り箸を渡してくれました。
しかし、ふたが閉まらないのでパックから焼きそばがでていたし、袋に入れたことは入れましたが、あくまでも入れたのであって(笑)。困ったことになったなと思ったのです。

そう思った瞬間。

わたしの目に飛び込んできたのは、瀬川さんのしまったっっという顔。どうしたのかと思って聞いてみると、笑いながら、

「言いくるめに、失敗したぁー。」
「??? へっ?」
「もう一皿、買っちゃった。もういい!! もういい!! 買っちゃえ、買っちゃえっ!!」

と言って、帽子を片手に店の前でくるくると歩き回っています(笑)。
せ、せ、せ、瀬川さん? 一体どうしてそんなことにと、聞こうと思ったわたしの前に、二皿目が……。それも、お店の方、曰く……

「さっきのより多いよ。」

せ、せ、せ、せ、瀬川さん、そ、それはないでしょう?
さっきのでもかなりの量なのに、それ以上のをもう一皿なんて……。

「どうして、もう一皿買うことになったの?」
「分けて入れた方がいいなと思って、パックを指して『一つください』って言ったら、こういう事になったんだって。」
「それって、ただの失敗じゃなくってファンブルって言うんじゃ……」
「確かに(笑)。ファンブルだ(笑)。」
「あい♪さん。瀬川さん、一体どうしたんです?」

と舞花さんの声。すぐそばには、不安げな風斗さんの視線もありました。

「瀬川さんが、ファンブルしたの。」
「??? なんですか、それ?」
「焼きそばを、もう一皿買っちゃったんだってさ。」
「なんでこんな事になったんですか?」

事情を説明すると、

「せ、瀬川さん、かわいそすぎる……。それで、それ、誰が食べるんですか?」

と聞く舞花さんの声は、笑いでふるえ、体はのけぞっています。

しかぁーし。

目線が「わたしは知らない」と意志表示をすることを、忘れているわけがありません。

「自分で食べてもらうしかないよねぇ。」
「あい♪さん、どうしたんですか?」

今度はGM小口。同じように事情を説明すると、

「あーあ(笑)。それは、店の親父の方が、一枚上だったって事じゃないんですか?」
「だから、ファンブルなんだよー。」
「なるほど(笑)。」

わたしは、みんなの共通の疑問を瀬川さんに聞くことにしました。

「瀬川さん、それ、誰が食べるの?」

もちろん、わたしの声もふるえています(笑)。

「そりゃぁ、みんなで……。ねぇ(笑)。」
「いややあー(笑)。わかった。一皿の七分の一ずつは食べるわ。割り当てだから。だけど、もう一皿は自分で食べてよ、自分で買ったんだから。買った人の責任やわー。」
「えっ、うそっ。……。わかった。わかりましたよ。僕が食べますよ。食べればいいんでしょ、『一皿と七分の一』は。だから、後、残りはみんなで食べてね(微笑)。」

と、しっかり念押し(お願いという噂もある)されてしまいました。

駅までの道で、聞いてみました。

「なんか、瀬川さん、いつもと違うよね。一体いつからだと思う?」
「バスの中で歌っていた時から。」

何とも明確な答えが、返ってきました。誰から返ってきたかは言えません(笑)。

上諏訪駅に近くなるに連れて「一体どこにいたんだ」と思うような、。ついに、身動きがとれなくなってしまいました。そこで、《サバイバル・アドベンチャー‐これであなたも冒険者》が決行されることになったのです。この《サバイバル・アドベンチャー》は箇条書きにしてまとめることにします。

サバイバルその一
この人混みを抜けて道の反対側にわたること。(上諏訪駅近く)
 →さすがに、ここで失敗するとは誰も思っていないでしょう。

「ここで失敗するようなヤツに冒険者の資格はなーい!!」(GM小口談)

サバイバルその二
ここを通り抜けて表側にでること。(上諏訪駅のコンビニで)
 →「サバイバルその二、いくよ。」
  と言ってコンビニに入っていくGM。またしても通り抜け。

サバイバルその三
冒険者たるもの体力が必要!
 →みんなで、歩く歩く。それも、ただ歩くだけじゃなくって、
  話しながら。話しながら歩くのは体力の消耗が早いんだよ。
  話すだけでは足らず、NHKの「みんなの歌」を歌っていた
  人もいました。他人事のように話してはいけませんね。
  ♪HEY! ウルラウルラウルラウルラウルラウルラ〜

 ラック判定
  →GM小口がラックに成功しました!!
   焼きトウモロコシ屋さん発見です。
   その上、買った焼きトウモロコシは最後の一本でした。
   はい、みなさんご一緒に。

   「おめでとー!」

   (このトウモロコシを茜さんに捧げ持たれていたことをGM小口は
    知っていただろうか。)

   また、風斗さんもラックに成功してコンビニを発見しました。
   ここで、みんな一休みです。

 ここに「サバイバル・アドベンチャー」は一応の成功を見たようです。

「任務完了。 オペレーション サバイバル・アドベンチャー。」

歌ったり、お話ししたりするうちにGM小口の家に到着しました。お母様が座布団を敷いて、料理を並べて待っていてくださって……感謝感激。夜店で買ってきた食べ物も、エビチリを始めとしたお母様の手料理と一緒に食べることになりました。大きなたこ焼きを食べて……。瀬川さん、焼きそばおいしくてほっとしたよね。きちんと一皿食べようとしてくれるので、わたしはとても申し訳なかったです。

みなさん、

「♪いいえ わたしは蠍座の女〜」

をバックにうちあげられた、花火のVTRを見ながら飲んだカリン酒のお味はどうでしたか? わたしはお酒がのめないたちなので、香りが強くて一口の半分ぐらいしか飲めなかったのですが、飲んでいたみなさんの顔を見ていると満足していたようですね。

おなかもいっぱいになったところで、二階に上がりました。今回の旅行の目的(?)である「妖魔夜行 番外編」のセッションの開始です。

ベランダにでている二人。せっかく、瀬川さんとの「二人の世界」の写真を撮ろうとしたのに、瀬川さんが逃げちゃうから……。さわやかGM小口だけの写真になってしまいました。ネガは、わたしが持っているからね(にこにこ)。

今回のセッションでは、様々な新事実が明らかになる兆しがありました。たとえば、

 ・舞花を連れていった男とのこれからの関わりは?
 ・もの静かな性格の渚さんによって麗子は薫くんと仲良くなるのか?
 ・流衣ちゃんのおばあちゃんと彩雲さんの恋愛話は?
  (小説をGMが書いてくれるかもしれない) など

があげられるのではないでしょうか。
そんなセッション中ですが、みんな眠いのでしょう、かなりぐたぐたになっています。
たとえば、

 ・「葉舞刃、いきまーす!」(←戦闘中の紫苑寺舞花)
 ・「えっ、今、何て言った?」(←同じく戦闘中のGM)
 ・「防護点……んっとぉー。何点だっけ?」(←同じく戦闘中の真樹麗子)

などなど。あげればキリがありません。GMは、

「こんな話になるはずじゃなかった。リプレイなんか絶対やんない。」

と言っていますよ。
(『逃げ』という説もありますが定かではありません。)

この時、クロくんは、瀬川さんに無理矢理に「クロ」を着せられていましたね。その様子にはGMの蝉の声が聞こえてきそうですね。

みーんみんみんみんみんみーん。

(実際、名古屋に戻ってからも、何回かGMの蝉の声が頭の中で響いていました。)

エピローグの諏訪湖での花火大会まで無事に終了したのは、昨日より一時間も遅い、朝の四時過ぎのことでした。終わって少したつとバイクの音が聞こえました。新聞が配達される時間……。こんなに朝早い時間まで、うるさくて申し訳ないと反省しつつ、朝の八時起床を約束。今回は守ってもらえると信じて眠ることにしましょう。

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