- 2日目 -
8月15日 その壱

朝、起きたら、麗子さんに
「雨もあがったというのに、まだ寝ていましたの? いまごろおはようなんて……もう早くありませんわ。」

とあきれられました。朝早く秋宮に参拝するのが麗子さんの日課だからって、わたしに押しつけないでよね。わたしは麗子さんじゃないんですからっ。

「これでもみんなより早く起きてるんだよ。」

と言ってみたら、

「ネットワークマスターたる者の心得でしょっ。」

と諭されました。だ、か、らぁー。わたしは麗子さんじゃないってばっ。

午前八時頃。

「風斗くん、舞花ちゃん、茜ちゃん、時間ですよ……。」

こちらの部屋には、発言者の意に反してこんな声が聞こえました……。

朝ごはんです。
みなさん、朝はあまり食べないようですね。朝ごはんをきちんと食べないと力がでませんわよ。これから下社秋宮に行くわけですし、わたくしの家である大社堂も探すのでしょう? 道に迷うことがわかりきっているのですから、ごはんはしっかり食べておいてくださいね。

下社秋宮に向かいます。
秋宮までの道を新しい商品を仕入れられないかしらと考えながら歩いておりますと、舞花ちゃんが笑いながら、

「麗子さん、自分の身を削ってまで作っているんですか?」

とわたくしに聞いてくるのです。風斗くんも

「本当だ。」

と笑っています。

「何を」かと思ったわたくしは、二人の目線の先に『御柱おやき』なるものを見つけましたの。でも、わたくし、火には弱いですし、作り方も存じませんし、あらあら困ったわねぇ〜……と思っておりましたら、いつの間に現れたのでしょうか野牟田くんが、

「いいじゃないですか、《本物の》とか《元祖》御柱おやきって名付けて売り出せば。弟子入りして作り方を学んで、大社堂の新商品として売り出しましょうよ。」

とか……。もう、みんな他人事だと思って言いたいこと言うんですから。それが、今のメンバーのいい所でもあるんですけれど。

秋宮に着きますと、どこからかとても綺麗な音色が……。

《血が騒ぐぅぅぅぅぅ〜》

体は勝手に動いてしまいますし、そわそわして、何だか落ち着きません。
音のする方を見やりますと、わたくし以外の分身が踊っていたのです。
毎日、それも二十分に一回、御柱が踊っているのですよ。わたくしの「お祭り好き」の血が騒ぐのも無理ありませんわね。
さすがは奉全様ですわ、わたくし以外にも分身を作っていらっしゃったなんて……。
あっ、そうそう、言うのを忘れておりましたが、

「踊っていたのは麗子さん自身じゃなかったんですか?」
「ほぼ毎日参拝しているのに、今まで気づいていなかったんですか?」

などという《鋭い》つっこみは受け付けませんのであしからずご了承くださいませ。

秋宮の裏手のわたくしの本体のある場所にみなさんをお連れしようかとも考えておりましたが、人が多いので今朝は無理ですね。

お守りや絵はがき、色々なものを売っていましたが、みなさんに大人気だったのは『お箸』でした。わたくしの身が削られているなんてと嘆いていますと、健御名方神と八坂刀売神が、本体はもっともっと古い木だから大丈夫と慰めてくれました。この際ですから、少しでも皆様に幸がありますようにと、祈ることにします。

舞殿の前で、今回の旅行の記念に集合写真を撮影しました。

「入る? どうする?」
「どっちでもいいよ。」
「ここまで来たんだから、行きたくない人っ! 誰もいないな! よし、行こうっ。」

というわけで、宝物館に入り、風斗くんの剣らしきものや、長い長い太刀を見ることができました。

宝物殿の後は、みんなで手押しポンプから(?)お水を飲みました。みんなの顔が気持ちよさそうです。お味はいかがでした?

その後は、大社通りを下って奏鳴館に行くことになりました。きれいな音のオルゴールたち……。生演奏を聴いただけでは物足りなくなって(?)実際に自分でひいていた人もいましたね。保母さんみたいだなあと思って見ていました。

奏鳴館の一階は、いろいろなオルゴールを聴くことができるようになっていました。みんなが聴いていると、全部聴き終わって暇を持て余した自称「茜さんの一番弟子」の報道部員が、いつの間にかわたしのカメラを持って駆けめぐるという大変なことが……。瀬川さんやわたしは聴き終わっていたので被害らしい被害は受けずにすみましたが、被害にあった方々、高校の新聞に載せられたり、ばらまかれたり、話を聞くための脅しのネタとして使われたりなど、悪用されることのないように注意してくださいね。

《教訓:由美ちゃんにはカメラを渡すな!》

お昼ご飯を食べました。これで、朝・昼・夜に関わらず、食事時に無口だということが証明されました。ご飯を食べた後も、寝不足がたたっているのか、みんな無口のままで元気がありません。

三時過ぎだったでしょうか、GM小口のお母様と色々なお話をしました。日本の三大奇祭の一つである御柱祭についてです。
その話の最中、寝ころんでいたGM小口がわたしの方を見た、あの目。わたしは忘れていませんよ。いいえ、忘れることができませんよと言うのが正しいのでしょう。
《どうだ》っていうような目。お母様のいらっしゃる手前、反応ができなかったので流しましたが、

「だから、《御柱》は恐いんだ。」

の言葉だけは、さすがに聞き捨てなりませんでした。すぐに、ブラックが降りてきましたもの。

「そうね。」(←これはわたし自身の言葉。)
「だから、《ブラック》は恐いのよ……」

諏訪湖に出かける時間となり、JRの下諏訪駅へ向かいます。
――そうそう、舞花さん。駅前のオブジェに巻いてあった縄は祭りに使われるものらしいですよ。やはり、あれは御柱祭に関連『大あり』のオブジェです。
駅のホームでも御柱を見つけました。麗子は、こんな所で小金を稼いでいるの? と言ったら、GM小口に注意されました……。本当に稼いでいるとは思っていませんよ。もし、麗子が本当にこうやって稼いでいたら、わたしはとっても悲しいです。

混んでいる電車に乗ってキューッとなりながら、上諏訪駅へ。
駅前でジュースを買い、今朝早くにお父様とGM小口にとっていただいた場所へと向かいます。

あれ? だあーれ? ビールを買いに行くのは。今日は、おかしくならないでね。

いろんな夜店を両脇に見ながら、席に到着。雲間からの光がすごくきれいで……。
こんなにきれいに晴れるなんて、きっと、昨日の『言霊』のおかげですね(笑)。

ありと戦いつつ、作っていただいたおいなりさんを食べました。おいしくって……。またまた、しばらくの間無言で(笑)、食べることに集中していました。でも、「耳」はBGMにしっかりと吸い寄せられていました。

「……御柱祭をイメージした曲、『命燃えて』」

というナレーション。すかさず、

「麗子さん、燃えちゃうらしいですよ。」

とは、茜ちゃんの言葉。
その曲がまた、……。花火大会に花を添えていました(笑)。

お弁当を頂いた後、トランプをすることになったので、「ダウト」はやめて(笑)「大富豪」にしました。
茜さんが、前夜の大貧民から大富豪へと華麗なるサクセスストーリーを歩みました(拍手)。
『幸運の反作用』が色々な人をおそったのですが、まともにくらったり、ものともせずによけきったり、人によってその結果にはかなりの差が出たようです。『作用・反作用』を何度も何度も繰り返しくらっていた人もいましたね。

さて、そんなことをしているうちに、花火があがり始めました。

「きたな、『衝撃波』。」
「どこにいる!! スーパーサイヤ人!!」

この言葉を誰が叫んだかは言えません(笑)。
お母様に「音がすごい」とは教えていただいていたのですが……。
「百聞は一件に如かず」を実際に体験できましたね(笑)。

花火の合間には、茜さんに講師(天体カメラマンの茜さんにぴったり?)になっていただいて、星空を眺めていました。本当にきれいなきれいな星空で、首が痛くなることもすっかり忘れて見入っていました。国語だけでなく理科の勉強にもなる……なんてすばらしい花火だったのでしょう(笑)。

花火師の競演花火が終わり、第二部の開始です。どこかで聞いたようなイントロが流れて……一瞬の沈黙は、爆笑へと変わりました。

「なぜ、セーラームーン!!」

"♪ごめんね 素直じゃなくって〜"

「しかも、歌入り!!」
「せめてカラオケにしてくれよ。」

"プログラムNo.1 タイトル、ムーンライトセレナーデ"

歌は……でしたが、花火がきれいだったので良しとしましょう。
このように始まった第二部でも、わたし達は第一部の時と変わらず、花火の合間に「星」空を見上げるという大変贅沢な時間を過ごしていました。

中盤にさしかかってきた頃にあがった花火からは《私の嫌悪感を誘う 茜さん談》ムカデが降ってきました。

「いやぁー。いやすぎる……。」

ここまで人にいやがられる花火をつくった人は「えらい」とわたしは思います。

さて、いよいよ花火も終盤。水上花火の時間になりました。

「どこでやるんだろう?」

と思っていると、目の前をなにかがフルスピードで走っていきました。

「なにか逃げていってるぞ。あれは、警備艇かなぁ。」

と言っているうちに、花火が目の前で!!

必死の努力もむなしく、最初の花火があがった時、警備艇はまだ火の粉がかかる位置にいたのです。

「早く逃げるんだ。がんばれ、警備艇!」

というGM小口の声に代表されるように、みんな「がんばれ、警備艇!!」コールを送って警備艇を応援していました。

「わたし達、何か違うものを見ているような気がする……。」

という舞花さんの声に頷きながらも、目は警備艇を……(笑)。警備艇の無事を見届けた後は、水上花火や水上花火と打ち上げ花火との共演に、目を奪われて見つめ続けていました。

フィナーレは、ナイアガラの滝。これで「色々あった」花火大会も終了です。あっという間でした……。

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