- 山出し編:2日目 その3 -
《無料観覧席》

そんなことがあったおかげで周りの方と少し話しつつ15分ほど立ってたら。

「はい、今から無料観覧席解放します。押さないようにゆっくりどうぞ」

おっ、ラッキー♪

ゆっくりと、でも急いで下に向かいます。
すぐそばに流れている川の河川敷、坂より少し離れたところが無料の観覧席です。
そこに座ろうとしましたが、河川敷です。
下に敷くものなど何も持ってきてません。

「そうだ、昨日もらったパンフレットを敷こう。」

次の柱が木落としをするまでに、予定時間で1時間ありますから、だいたい2時間弱くらいかかるでしょう。座れてよかった……。


ここから見る坂はさきほどより少し遠いですが、距離と角度が分かる分、ぐっと怖い……。

写真も撮影して、持ってきたペットボトルのお茶を一口。
ふぅっと落ち着いた時、隣の人の会話が飛び込んできました。

「名古屋からバスツアーできたんです。」

な、なんだって!? 名古屋ぁっっ!?

こんな、10万人はいるだろう人混みの中から隣に名古屋の人!
いったい、なんていう偶然なのだろう……、そう思って

「名古屋から来られたんですか?」

と声をかけたところ、皆さんとっても気さくな方々で。

「バスツアーで来たんだわ」
「私も名古屋からなんですよ。電車できました」
「敷くもの持ってないなら、こっちすわんなさい。」

ありがたいお言葉……。
その言葉に甘えて、端っこにちょこんと座らせていただきました。

「駅からここまでどうしたん?」
「歩いてきました。」
「ほりゃ、大変だったね〜。ガイドさんが駅からここまで7kmって言っとったに。」

えーっ! 7km!?

また、徒歩で戻るんだけど、往復14km!?
……体力ついてて、よかったよ、マジで…。

 注:後からよくよく考えると、7kmはないと思います。
   下社の山だし・里びきあわせた曳行の長さじゃないかしら。
   実際には、4kmくらいかな…。

「なに、お祭り好きなの?」
「大好きですよ。」
「なら、6月の徳川園くるかね?」
「徳川園ですか?」
「あっこ、山車があるやろ? あれ引くんだわ。」

ということで、なぜか6月手伝いに行くことが決まりました(笑
そんなこともまた楽し。

《木落とし観覧》

無料観覧席の入り口をふと見ると、またとめられてしまった様子。
これは大混雑です。
座れてよかった……。

御柱祭の新聞を見せながら、みなさんにこのお祭りの話をします。

気がつけば、すでに木落としの予定時間をずいぶん過ぎています。

まぁ、人力ですべてを行っているわけですから、ぴったり時間通りになんて、うまくいくわけがありません。予想通りですね。

といっても、そろそろ、木落とし前のセレモニーが行われないと、最後の柱が落ちる頃には日がとっぷり暮れてしまいます。

「おっ、何か出てきたぞ!?」

綱が木落とし坂に出てきました。

垂れ幕が落とされ、急な坂道をてこ衆が先におりてきます。
あちこちで、こけながら……。

急坂だということと、
朝方に降った雨でぬかるんでいるのと、
1本目の柱がまっすぐに下へ落ちなかったらしく、横にえぐれているのと……。

とにかく歩くにはちょっと大変な状況。

……。
って、そこを柱が落ちてくるって、大変じゃね?

その次は、御幣を持った方々が降りてきます。
足を滑らせつつ……。

木やりが鳴いてるようで、曳き手の声や観客の拍手が聞こえます。
木やりが鳴き、曳き手と乗り手と心が1つになった時。
観覧席からはまったく見えませんが、柱の後ろにぴんと張った綱が斧で切り落とされます。

そして……

どぉぉぉぉぉぉぉという地響きと、
うぉぉぉぉぉぉぉという歓声が。

……落ちてきた!!

一瞬です。
猛スピードで落ちてくる柱。

氏子さんの歓声も、
観客席の歓声も、
ひときわ大きくなります。

その間。
たった、数秒。

無事に坂の下まで落ちてきて、木遣りが歌われます。
あぁ、事故なく、無事でよかった……しばらくすると、

「救急車が通ります!!」

だれか、けがしてんじゃん!!

 ※ 翌朝、ニュースを確認。
   幸い、大きなケガじゃなかった様子でほっと一安心。

「ほんとに、6月来なさいよ。あてにしてるんだからね」
「ほんとに行きますよ。」

そんな会話を最後に、バスで名古屋に帰るというみなさんと別れます。

え?
6月、どうするのか、って?
そりゃ、行きますよ、当たり前でしょ。

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