- 山出し編:2日目 その2 -
《春宮〜注連掛へ》

春宮を坂の下に見ながら「後で、必ず来るね」と呟いて先を急ぎます。


ゆるやかな坂道を上ってしばらく行くと、大きな看板。
この先からは、両側に屋台も出ていて、お祭り気分は高まるばかり。

おや?

人の流れが2分してます。
道をまっすぐ行く人と、丘の上に上っていく人と……。
まっすぐ行けば、木落とし、でも、ここは、なんだろう??

登ると、昨日までに木落としの終わった柱が5本、並んでいました。

ここは、注連掛(しめかけ)だ!!

注連掛は、山だしの終点。
つまり、山から引き出した御柱を来月の里引きまで、安置する場所です。

引き回すといっても、丸太の下にコロがあるわけではありません。
引き回したら傷つくのは当然ですが、アスファルトに直接接している分、柱もあちこち擦り傷だらけ。
なんだか、少し悲しくなってきます。


そこでひと時の眠りについている、秋二にゆっくり触れてみました。
手の平から、言いようのない力が、柱に懸けた諏訪の人たちの想いが、伝わってきます。

どれだけ外側が傷つこうと、この柱に込められた想いは壊れることも揺らぐこともない。
冷たく、寒い気温ですが、心が熱くなってきました。

さて、注連掛で待ってばかりはいられません。
まだ、木落とし坂まで、あと1km…。

《木落とし坂手前で》

小雨がやんできたことをこれ幸いに、先へと進みます。

郵便局、地元の方、ジュースを販売する方々、そして、屋台。
道の両側には様々なテントが出ています。祭りですね〜。

でも、歩みは止めません。

坂へ、坂へ。
前へ、前へ。

ゆっくりとした上り坂。
普段はビーナスラインへ続く道も、今日は御柱の曳行路。
車両通行止めにしているので、ど真ん中を歩いても安心です。
あ、もちろん、それでも気をつけて歩いてますよ。

「……お願いだぁ〜っ!!」

何で、木遣りの声? まだ、ここを通る時間じゃないのになぁ…。

と不審に思って、少し急ぎ足で坂を上ると、目の前に大画面のテレビが!

ローカルのテレビ局が移動中継車(トラックの横が一面テレビになってるもの)をとめてました。屋台の建ち並ぶその上を通る道路の路肩に。
この先に進んでもなかなか見られないので、ここで生中継をしているのでしょう。
(後でパンフレットを確認したら、テレビ中継を行う場所の1つになっていました)

もう少しで、落合の交差点。
あと少し。この先は、今までより急な坂ですが、あと少しです。

ちなみに、この交差点では、柱がほぼ直角に曲がります。
丸太の柱はなかなか曲がれませんから、難所の一つ、つまり見所でもあります。

そんな交差点の真ん中で、警察の人が拡声器で叫んでます。

「これから先、有料観覧席のチケットをお持ちでない方は通れません。」

えーーーっ!?
そんなん、持ってるわけがないじゃん。
それ、見れないってこと??

《やっぱり、木落とし坂へ》

いや、待てよ。
ひょっとしたら、帰る人たちと入れ替わりでみれるかも。

究極のポジティブシンキングだな、と自分で苦笑。

それに、ここで引き返したら、つまらないじゃん。
せっかく、今まで歩いてきたんだし、昨日とまった意味もない。
ここまで来たんだし、行くしかないでしょ。
行ってダメなら、あきらめもつく。

人ごみを見ながら、気合を入れなおします。

坂を上がるとすぐに、道幅いっぱいの人混み。
登る人が8割で、下りてくる人が2割。
その中から、必死にスペースを見つけて前に進みます。
こういう時に、一人旅ってのはありがたい。
誰かとはぐれることを考えなくてもいいし、自分ひとり分のスペースを見つければいいから。
坂まであと数百mのところまで、登ってきました。

が。

さすがに、この先ほとんど列が動きません。
のろのろ、というより、とろとろ……という感じ。
歩けば5分もかからない距離を、20分ほどかかって進みます。

なぜか、晴れ間が出て、さんさんと照りつける太陽……いったい、さっきまでの雨はなんだったん?(笑

そうしているうちに、坂が目の端に入ってきました!!
ここまで来れたことに感謝。

《木落とし坂》

何とかかんとかどうにかこうにか進んで、木落とし坂付近に到着。

た、たかいっ!!

周囲からも、時を同じくして「うぉぉぉぉ」という声が聞こえます。

のろのろになってしまう理由が分かりました。
思わず、写真を撮影してしまうのですよ。

写真ではなかなか伝わらないと思うのですが、どれくらいかというと……。


傾斜角30度、長さ100mというほとんど断崖絶壁にも等しい状態。真下にいれば、見上げるだけで、息を呑んでしまいます。

思った以上に、高い。
怖い。

ここから長さ16m、重さ16tの巨木が落ちてくるんですから、諏訪の男の度胸だめし、って言われる訳です。

坂を過ぎれば、列はすーっと進んで、無料観覧席の入り口さえ、通り過ぎ、そのまま流され……。

まずい、と流れに逆らいつつ、歩道の方へいったものの、屋台が邪魔でなかなか逆流できません。

やっとの思いで無料観覧席の入口に着いたら…。

「今、無料観覧席は満席になりました。もう入らないでください。」

マジか。
ほんとに見られないのか。

帰るか?
いやだ。

警備員さんのちょうど目の前だったこともあり、入り口の坂で立ち見しようと思い立ちました。
他の人もみてたしね。

警備員さんも中に入るな、とは言ってコーンを立てたりしてるけど、そこで見てることは禁止しなかったしね。

ということで、立って見ようと、腹を括りました。

おしくらまんじゅうより、ちょっとマシなくらい混雑状況な観覧席入口。

警備員さんとおじちゃんが、押し問答をはじめました。

「入れません、入れません!!」
「何でや!」
「入れません、入れません!!」

いい続ける警備員さんに

「入るんやない! 出るんや!!」

と言い放ち、制止を振り切って下へ降りていったおじちゃん、入り口付近の人たちから大絶賛でした(笑)

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