奉納の太鼓が打ちならされる。
一礼して終えると、次は役員の挨拶。
セレモニーの開始だ。
だが。
この時、すでに16時。
観客の疲労はピークに達していた。
「はよ、やれー!!」
言いたくなる気持ちもよくわかる。
っていうか、私も言いたい。
でもさ。
こればっかりは、乗り手の安全も考えないとはじまんないもんね。
一番最初に建御柱が終わる予定だった秋一。
建御柱を見てから帰ろうとしていた方もたくさんいらっしゃったようだ。
並んでる順番を横入りしたり、鞄が体に当たったり、いらいらしている人も多く、あちこちで口げんかが勃発。警備の方に連れて行かれた方も(笑)
自業自得なんでしょうがないですけどね。
並んでいる列も大変で、セレモニーが始まっても何が起こっているのかわかりません(笑
せめて、前の方、座ってもらえたら違ったと思うんですけどね。
さて、そうこうしているうちに、何とかわかるようになってきました。
まずは、やはり。
木遣り。
柱の前に、木遣り隊が並び、建て御柱の成功を願って歌います。
その後は、乗り手さんの挨拶。
「みなさんを信じて乗ります!!」
おぉぉぉぉっ!という声と拍手が起こります。
そして、少しずつ、少しずつ、柱が天に向かってあがっていきます。
「よいとまけ〜」
「よいとまけ〜」
声に呼応して、観客も声をかけます。
「よいとまけ〜」
「よいとまけ〜」
「どんどんまいて〜」
「どんどんまいて〜(笑)」
実は、一番最初の写真から、すぐ上の写真までの間の時間は、わずか20分の出来事。
でも、ここからが大変なところです。
途中途中、木遣りの間に、乗り手さんたちは大慌てで命綱と足場の確認。
ここからは、ゆっくりと垂直に近づけていきます。
立ち上がるにつれて、乗り手の方が徐々に柱の上の方に集まってきます。
「……どこにあんなに乗ってたんだろ?」
ほんと、30人くらいいるんじゃないでしょうか?
驚きです。
「よいとまけ〜」
「よいとまけ〜」
「よいとまけ〜」
「よいとまけ〜」
上にあがるにつれ、安全を確認しながらゆっくりと進みます。
時折吹く強い風に、柱が揺れます。
「おぉっ!!」
「危ない!!」
「こんなに大変なら、時間がかかるのもわかるわ…」
足場を組む時間、
命綱を付ける時間、
そして、柱が立ち上がるに連れて、命綱の場所を変える時間……。
みなさん、あせらなくていいですから、安全第一でお願いしますよ。
「よいとまけ〜」
「よいとまけ〜」
だんだんあがってきました。
「もう少しいくから、そこでロープきっちり止めて!」
「よいとまけ〜」
「よいとまけ〜」
「よいとまけ〜」
「よいとまけ〜」
止めた後、総代が柱の根本に近づきます。
どうやら、垂直に立ったかを見ているらしい。
「OK!」
「たちました!!」
木遣りが泣きます。
呼応して泣こうとした柱の上の木遣り隊、地上から挨拶するからやめろー、と止められ(笑)ありがとうございました、の挨拶へ。
曳行の時同様、「ヨイサ!!」のかけ声でしめます。
そして…。
上から幕がおりてきました。
諏訪の心がここに宿りました。
本当はこの後、お菓子をまくのですが、もうタイムアウト。
実は、この時点で17:00すぎてます。
建御柱を開始してから1時間半が過ぎているんです。
まずは、小雨の降る境内を駆け抜けて、新鶴本店へ。
時間で閉店しちゃうと、せっかく予約したようかんが食べられなくなっちゃいます!!
「す、すいません!!」
肩で息をしながら飛び込むと、対応してくれたのは昨日の奥さんでした。
「あ、あの、あの……」
「そんな急がなくても大丈夫ですよ。昨日の方、ですよね?」
「はい!! 昼でもなんでもなくなっちゃってごめんなさい。」
「いえいえ、気にしないでください。今日は、ずいぶん遅れたみたいで」
「ありがとうございます」
「予約票、いただけますか?」
いそいそと予約券を渡すと、すぐに渡してくれました。
「また、よろしくお願いしますね!」
「はいっ!!」
元気に返事をすると、大社通りを高速歩行で下っていきました。
まだ、おみやげをなにも買ってない!!!
昨日の下調べしといてよかったぁぁ。
ガイドブックと、日本酒、実家へのお土産に、会社へのお土産………。
自分の分はっと……、ここじゃないぃ!(笑
帰り道。
駅前のお店に飛び込み、おみやげを買うと、財布の中には1000円。
ぉぃぉぃ。
今日の夕飯、どうするんだ!?
と嘆いた駅のホーム。
次の塩尻行きは、18:00過ぎ。
家に帰ったら21:00すぎる…
こうして、名古屋駅到着が21時になってしまったのでした。
でも。
建御柱が見えたから良いのです♪
さて、長野ももう最後。
塩尻の駅でワイドビューしなの待ち。
夕飯を買った駅のコンビニ。
同じところにコイツが……。
買っちゃった♪
でも、もったいなくてのめねー(笑
ということで、下諏訪の日々でした。
たくさんの人に出会って、
たくさんの人にふれて、
まだまだ、まだまだ、人間、捨てたもんじゃない。
って思いました。
ありがとう、下諏訪。
また、きっと、くるからね。
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