- 里引き編:3日目 その1 -
《長い一日》

朝7時にセットしたモーニングコールで起きる。
天気はあまり良くなかったけれど、気分はまあまぁ。
昨日、御柱曳けたしね。

さぁ、今日は秋一を見て帰ろう。

しかし。
それだけなのに、なぜ。
名古屋着が夜9時になったんだろうか(笑

《秋宮へ》

ホテルの食事をがっつり食べる。
昼ご飯が遅くなるような気がして……。

松本を8時に出て、下諏訪に到着したのは9時前。

お手洗いをすませて秋宮へ向かうもすでに混雑。
前の方へと押されながら、立って待ちます。

9:30。
予定通りに冠落としが始まる。
ほとんどなにも見えないが、飛び散る木くず(木っ端)が見える。

どうやら冠落としは終わったようだ。
人ごみにまぎれてほとんど見えないが、いつもと違う空気が漂う。
厳かな空気。
でも、どこかあたたかだ。

建て御柱の準備に移る。
のために、横に寝ている御柱の下に馬が入って、柱を浮かせる。
人影の向こう側にやっと冠落としをした顔が見えた。


きれいなカットだ。
どこかから聞こえてきた。

「ロケットみたいだね」

確かに、どこまでも、飛んでいきそうな気配がする。

私の目の前には脚立があった。
おじちゃんたちがそれに乗って写真を撮っていた。

「こんなにみんな立錐の余地なし、なのに…」

憤慨してた自分を後悔。
近くに寄ったら、脚立に乗って写真を撮っていたおじちゃんたちは、それを周りの人たちに見せていた。

「今、こういう風になってるよ」

だけじゃない。

「足、しんどいで、ここにちょっと腰掛けやぁ」

その脚立を周りの人たちに貸して座らせていた。

ごめんなさい、おじちゃんたち。
でも、後ろからめっちゃ詰められると、かなり痛いのに。

「そこ、一人来るから、じっと詰めんで立っといてね!」

と笑いながらいうのはナシの方向で……。

あ、もちろん。

「後ろから押されなければ」

と私もにこやかに言いましたけどね(笑

すでに、13時をすぎていた。
今日の予定は、もう2時間遅れている。
先日、事故があったばかりだから、丁寧になるのも無理もない。

左からにぎやかな音が聞こえた。
どうやら、秋二の柱が先に建ちはじめたようだ。

後ろからも、にぎやかな音が。
秋四が境内に入ろうとしているようだ。

「秋四、先入れるぞ!!」

実行委員の一の声が聞こえた。
そして、待ってる人たちをかき分けて柱の通るスペースをあける。

待ちに待った秋四。
曳いていくみなさんの顔が晴れやかだった。

とてもすてきな笑顔。
もう少し、もう少し、がんばって!!

曳いてきた下諏訪の氏子さんが柱の後に続いていた。
道がせばまっているので柱と一緒に歩けないからだ。

氏子さんが奥へ進んでいった。

しばらくして、観客規制用のロープ解放。

「わわわわわわわ〜」

倒れそうな私の声に、前の男性が助けの声を上げてくれる。

「押しても無理だ! 前はあいてないぞ!!」

警察の方や、氏子の方々が安全のため、もう少し下がるように言っているがもう怖くて下がることさえできない。

「後ろあいたから下がって!!」

何度言われたことだろう、
何度下がったことだろう。

規制線、解放する位置決めてから解放しましょう……。

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