休憩が終わり、曳行再開。
おぉぉっ。
ここは、ラッパ隊の真横ではないですか!
たとえは悪いですが、野球場の外野席並のラッパ音です。
臨場感にあふれています……木遣りの声が聞こえないくらい(笑)
「氏子のみなさま、お願いだぁ〜」
「おぉぉ〜っ。ヨイサ! ヨイサ! ヨイサ!」
と曳くけど、ぜんぜん進まずに反動で綱が元に戻ってしまい、結果、前より戻っていたり(笑)
目の前のおじちゃんが、話しかけてくれました。
「ね、戻ったらいけないよね〜。あらあら、元の場所より前に戻ってる」
「ですね〜」
なんて、とっても世間話。
先ほどの食祭館のあたりまで進んだのは、15時すぎてました。
ここで、少し長めの休憩。
「おねえさん、地元の人じゃないでしょ?」
「おじゃましてて申し訳ありません」
私は深く頭を下げました。
「気にしちゃいかん。私たちだって、秦野からきてるんだから。」
神奈川かいっ!!
でも、諏訪市の半纏着てるじゃないですか?と聞いたら、役員の方にご友人がいらっしゃるということで。
そうだよね。親戚・友人を呼び集めての盛大なお祭りだもんなぁ。
「私は名古屋からです」
「おねえさんは、一人?」
「はい。」
「……手、痛いでしょ?」
そうなんですよ。手袋しないと手が痛くなってくるんですよね……。
なので、パーカーの袖を手のひらに持ってきて、曳き綱をつかんで引っ張ることにしました。
「写真撮りましょ」
どうやら、5人くらいで来られて、みんなで曳いているようです。
「うちの娘より若いくらいだ。まだ、嫁にもいかん……」
「おいくつですか?」
「30ちょっとだな」
「残念ながら、娘さんより年上ですわぁ。独り身なんで胸が痛いです」
周囲がちょっと笑った後、速攻のフォロー攻勢(笑
「もうちょっと前にわかっとったら、うちの息子の嫁にほしかった!! 結婚したばっかりなんだわ〜」
「うち、男の子だったらなぁ」
「あぁ、この人んとこいいぞ、市役所に勤めとるで」
「うちもつぶれにくいところにつとめとる」
「あんたんとこは、結婚したって〜」
なんじゃそりゃ(笑)
まぁ、そんな屈託なく笑いながら会話を続けて、ようやく坂を2/3ほど上ってきました。
いったん休憩です。
沿道で声援を送ってくれてるおばあちゃんに、おんべをプレゼント。
「これ、うってるやつじゃないの?」
「えぇ」
「お金やらなあかん?」
「いえ、いらないです。実は、私もそうやって頂いたんです。柱が通るのをそれを振って応援してください」
「お優しい方……ありがとうね。まったく、知らない方なのに……。」
「これもご縁だと思ってますから」
おんべがつなぐ縁。
いいじゃないです?
おばあちゃんが立っているその姿がね、よほど、曳いてみたい、って思ってるような気がしたんです。
でも、それは無理なのでせめて、一緒に曳いてる気分になれたら、と。
おばあちゃんと、一緒に行動している方と、そのまま少し立ち話。
「この人ね、お店やってるの。スナックなんだけどね」
「ママさんですね!!」
「そうなのよ…」
「もう80越えてるんだけどね」
「すごいじゃないですか!」
「……もう次はこれないかもしれないからね」
「そんなことないですよ。6年後も足腰ぴんぴんして、大丈夫ですよ。」
おぉっと、曳行開始。
「ヨイサ!」
いつか、どこかでお会いすることがあれば、また、元気な顔を拝見したいですね。
なぜか、今までと勝手が違って、なかなか進まない。
「まぁ、しょうがないな、一番太い柱だから」
綱のつながっている元の方をみると、やっと柱が坂をあがってきたように見えます。
柱が坂を上ろうとしているので、今までより、ずっとパワーが必要です。
「明らかに重さが違うな」
そうなんですよ。
今までと綱の重さが違ってるんですよ。驚き。
それでなくても、うまく引き進める時と進めない時で、違うんですよ。
綱の重さが。
うまく引き進める時は、引っ張っているうちに、
ぐんっ!!
っと綱が軽くなるんです。
そうすると、それほど力をいれなくても、するするとおもしろいように滑り出します。
そして、少しずつ綱が重たくなっていくと、そろそろ止まる、ってわかるんです。
「見えてきたね〜」
ほんとだ、あれほど遠かった鳥居がいつのまにやら視界に入ってきました。
旗衆の旗が鳥居の前にあるように見えます。
もうすぐ境内。
自然に力が入ります。
「ヨイサ!!」
オルゴールの博物館「奏鳴館」を曳いて通り過ぎました。
ここでちょっと長めの休憩。
おじちゃんが200mlの缶に入った飲み物を回し飲みしています。
「お姉さんもどうだ? 樽水だけど。」
た、樽水……もちろん、酒です(笑。
「真澄だよ」
また、真澄ちゃんです。
ありがたく頂きました。
ごっついおいしい……。
しょうがないわなぁ、こんなに暑い中をほとんど何も飲まずで曳いてるわけだから。
奥様から私にも差し入れ。
焼き鳥です。
「いいじゃない。もう友達になったんだから」
「ありがとうございます!」
かっこよすぎますよね。
いつか、こんな言葉言ってみたい!
何度か止まりながら、引き進み。
気づけば、鳥居が目前に迫ってきました。
警察の方が、拡声器で叫んでいます。
「この先は氏子さん以外通れません。」
び、微妙……。
このままだと私も通れませんが(滝汗)、このみなさんと友人なので、大丈夫だよね、ということで続行。
秋宮は、鳥居から拝殿までが緩やかな坂道になっています。
もちろん、今までの「道路」とは違い、境内ですから道も狭いし、石畳。
さらに、ご覧になられている方も半端じゃないほどいらっしゃいます。
御柱の通れるスペースは、石畳の幅くらい。
木遣りが始まります。
「……お願いだぁ〜」
「おぉぉぉ! ヨイサ! ヨイサ!」
一気に鳥居をくぐり、曳いていきます。
「この先階段がありますので気をつけてください」
おぉっ、坂道だけじゃなくって、石畳の階段だった。
周りの人とかなりぶつかりながら引き進みます。
「お姉さん、こっちおいで!」
おじちゃんが呼んでくれたので綱の下をくぐって、反対側に。
それでも、綱を引く手はゆるめません(笑)
もうすでに素手で曳く用のロープを持っています。
「ヨイサ!!」
声を出しながら、とにかく引っ張ります。
境内にいる方々が、口々に「ヨイサ!!」と言ってくださるのが、もうぐったりと疲れている腕や足に入る力になります。
ピピーーッ!!
笛の音で停止。
この先、かなり狭くなるので、綱の外側に出るよう指示がでます。
そして、もう1つ。
曳き綱を外して素手で綱を引いてください、と。
巻き取れるように、曳き綱を取っておくのです。
さぁ、そろそろ、終わりが見えてきました。
「ヨイサ!!」
一気に拝殿の方へ。
そこまで曳くと、綱を巻きとり、曳行終了です。
一仕事、終わりました。
少し息が上がってしまったので、神楽殿の裏手で息を整えます。
そして、境内から外へ。
新鶴本店の前を通ったあたりで、先を歩くおじちゃんたちの姿をみつけました。
一言お礼がいいたくて、駆け寄って
「ありがとうございました!!」
と言ったら
「いやぁ、あなたは最後のファイトがすごいっ!!」
とほめてもらいました。
「ほんと、うちの息子の嫁にどうだ?」
また、そこかーい!(笑)
© 1997 Member of Taisyado.