- 里引き編:2日目 その2 -
《わたし、観光客です...》

なんだかいてもたってもたまらなくって、秋一を見に行く事にしました。
14:30に坂の途中なら、ここから行けば駅前くらいで秋一に出会えるだろうと、曳行ルートを逆走。

途中で長持行列があったりするのですが、なぜか、床屋さんが!?


おんべを持ったこのキャラ、小さい子供たちに囲まれて楽しそうでした。

さぁ、秋一です。
大社通りの坂を下り、しばらく行くと、旗衆。

旗衆がいるということは、ここが曳行の先頭です。
時計をみると14時すぎ。なんか今日は調子よく、動いてます。

少し足を速めて駅前へ急ぎます。

曳き子さんたちが「ヨイサ!!」のかけ声をあげながら、通り過ぎます。
すれ違いつつ、なんとか、駅前に場所を見つけて、曳き手さんの真横すれすれでみることに。

駅前も人垣が4重になっているような状態。
もう、そのくらいの距離しか場所が空いてないのです。

まだまだ柱こないのかしら? という観光客の方に

「あと、100mくらい先ですよ」
「え? まだそんなにあるの!?」

えぇ、まだまだ先です。

「16tもの重さを人力で曳くわけですから、多くの人が必要です。」

と、話し始めたら、徐々に私の周りに人垣ができてきました。

えっ!?
そうか、みんな「まだなの!?」って思ってたのね(笑

秋一は今回一番太い柱で、曳く人もたくさん必要で、引き綱だけで200m弱あるらしい、ということを説明しておきました。
引くロープは太いので手が痛くなるから、曳く用の細い綱をつけて曳くということも。

「おねえさん、地元の方?」

……私も、観光客なんですけど(笑

《!!!!》

向こうの方から、地元の方っぽくないお父さんが陽気にやってきます。
おみやげ物屋で売っているおんべを手に。

「ヨイサ! ヨイサ! ヨイサ!」
「ヨイサ! ヨイサ! ヨイサ!」

沿道から、私もおんべを振りながらかけ声をかけます。

ここで少し休憩のよう。
柱を曳くには結構なパワーがいるんですよ。

私の目の前ほどなくで、お父さんは止まると一言。

「はい、みんな、ここが駅前だからね、帰るよ〜。」

その声にあわせて中から奥様とお子さんが。

「その曳き綱、誰かほしい人にあげちゃいなさい。」

え?? ま、マジ!?
マジっすか!?

曳き綱を持っているのは地元の方か関係者の方か。
つまり。
これを持っていれば、柱を曳くことができる。

「その綱、誰かほしい人にあげちゃいなさい。」
「こんなん絶対いる人いないよ。」
「じゃ、もらってもいいかな?」
「はい。」
「ありがとう!!」

というわけで、そのまま目の前の綱に結びつけました。
子供たちと入れ替わり、といった感じですね。
しら〜っと(笑)

でも。
氏子さんのお祭りです。神事です。

本来は、部外者が入っていいもんじゃない。

だから。
やるからには、周囲のご迷惑にならないように。
「ちょっと試す」なんて感じじゃなく、御柱に敬意を払って、きちんと曳きます。

少し、深呼吸。
御柱本体からずいぶん離れていたこともあったでしょうし、そんなタイミングがあったことに感謝しなくちゃ。
酔っぱらったおじちゃんが、スーツ姿で大きな声で飛び込んできました。

「いやぁ、俺、さっき映像を見たけれど、コイツはすごいっ!!」

どうやら、御柱祭というものを今までご存じなかった方のよう。
ツボにはまっちゃったのか、熱く熱く、休憩中の曳き手さんに語ります。

「おねえちゃん、美人だね!!」

そこかよっ!!(笑)

「コイツは上社下社の力の結晶だよ!! がんばってね!!」

聞いてるだけで、思わず笑みがこぼれます。

こうやって、このお祭りを好きになってくれる人が増えたらいいなぁ。

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