3.魂が語る刻
クロの話を聞く限りでは、全員で初島に行かなければ行けないようだ。しかし、今の麗子はろくに動くこともできそうにない……。
麗子階段上がるのにも人の手が必要だし。 経若やっぱり瀬川さんが抱きかかえてあげるんじゃないですか? 一同おお(嬉しそうな声)。 経若大丈夫か、麗子? とか(妄想)。 GMおいおい。 瀬川そう言う関係じゃない気がする。 経若そこまでいけないのか。
経若役のプレイヤー、何だか妄想が暴走している。この後も小声で何か言っている。聞いていたのはごく少数のようだが(笑)。
GM麗子。しばらくすると、君は何かに呼ばれている気がする。 麗子麗子〜、とか。それとも、麗? GMいや、正確に言うと声じゃない。何かに引き寄せられてるんだ。で、痛みも少しだけ和らいで君はふらっと立ち上がる。 麗子じゃ、そのまま引き寄せられるままに。「何かが私を引き寄せている……。」 瀬川「どうした、麗子!」 [憑依]はできないかな? GM妖怪にはペナルティがつくが、できないことはない。 経若けど、引き寄せられることには変わりないんじゃ。 いや、誰が引き寄せているか分かれば対処のしようはあるんじゃないかと。 GMまあ、やってみたら? やるだけやってみよう。(ころころ) GM(即座に)かぁん。軽く目眩でもおこしておいて。 麗子当然だーね。
麗子は諏訪大社下社・秋宮へ向かっていく。瀬川たちはそれを追う。向かう先は麗子の本体の樹・初代御柱が眠る秋宮の裏手だ。
キャンペーン第一話「月の夜 時を越え」では、阿部那月により本体は麗子と切り離され、結界に封じられていた。結界そのものは那月との戦いで消えたのだが、本体の樹に貼られた呪符と書かれた呪文はまだ消えていない。
GM本体の樹の前に立った麗子さんに、再び「――触れて」という思念が届く。 麗子……触れます。 GMその瞬間、樹に書かれた呪文と貼られた呪符が消え去ります。そして、御柱と重なりあうように一人の女性の姿が浮かび上がりますね。 麗子(遮るように)はいっ、分かりました。 GM阿部那月のような服を着ているんだけど……いつもよく見ている顔だなぁ。 風斗え? GM麗子さんです。 あやぁ? GMただし、今の麗子さんのように微笑みを浮かべてはいなくて、ひどく冷たい感じのする女性だね。 麗子クールな感じで。 GMで、その幻のシリアス麗子さんは――。 麗子あの〜、今の麗子がシリアスじゃないと言ってる気がするんですけど?( GMあ、そういう意味じゃなくて……。 その通り。(自信満々) 麗子途中参加のあなたには関係ないわ(笑)。 GMまあ、彼女は厳かに「――私の名は真樹奉全」……え〜っと。真樹奉全という名前を知らない人、いる? 麗子全員知ってると思うけど。 クロう〜ん、細かいことは覚えてないや。 GM真樹奉全というのは、先代<大社堂>のメンバーの一人だね。しかし、<龍>との戦いの中で死んでしまったとされていたはずなんだ。 瀬川(大きく息を吸い込む) 麗子じゃあ、片膝をついて「承知しております」と。 GM君のそういう動作に構うことはなく、奉全は言葉を続ける。
「私は妖怪として生まれてからずっと孤独だった……だがその孤独から私を救ってくれたのが、阿部月晴という陰陽師――人間だった。私は彼に仕え、陰陽道を学び、そして奉全という術者としての名を与えられたのだ。その後、私は月晴の子である那月と出会うことになった。彼女は私にさらなる喜びを与えてくれた……そう、人間としての生き方を。だが、私はあの子と出会うべきではなかったのかもしれない。妖怪と化した木曾義仲との戦いにおいて那月が戦いに加わることを、私は許してしまったのだから。いくら陰陽師として最高の実力を持つとはいえ、那月は人間にすぎないのに……。」
そして、それは同時に那月の妹弟子である少女・潤葉をも巻き込んでいく。
彼女こそが現在の麗子の魂の片割れ。賀茂一族の血を受け継ぐ娘。彼女の術者としての名前が麗。
義仲との激戦の結果、潤葉は命を落とし、真樹奉全も<龍>の力に倒れることとなる。
が、薄れゆく意識の中で、奉全はある方法を思いついたのだ。那月や潤葉への、償いの方法を……。
GM「私は、潤葉の魂を私の肉体に受け入れることを決意した。そうすれば潤葉は生き続けることになる。幸い、潤葉の魂は那月が水晶球に封じている。おそらく那月の力量ならば、私の肉体に潤葉の魂を入れることなど、造作もないことだろう。だが、一つ不安があるとすれば、潤葉の魂と私の魂が混じり合ってしまうのではないか、ということだ。そのため私は不測の事態に備え、事前に術を施した。私の本体――御柱に強大な呪力の歪みが発生した時、この言葉を伝えられるように……。
潤葉の魂と私の記憶を受け継ぐものよ、聞いてほしい。あなたは決して偽りの造られた心を持つ存在ではない。妖怪である私と人間の那月や潤葉――私たち三人の<想い>から生まれた新しい<御柱>なのだから……」
そう言い残し、真樹奉全は姿を消します。
一同(重い沈黙) 瀬川「……消えてしまった。」 GMで、麗子さんの身体の周りに現れていた呪文や光が消えていくよ。あ、痛みもなくなるね。 御柱の方はどうですか? GM普通の状態に戻った。まあ、元通りになってしまったので、麗子さんはまた半径50キロ以内しか動けなくなったけど。 麗子あの戸隠の旅行もよかったかもしれないな、なんて思ってる。
この後、プレイヤーの何人かから「話が長い割によく分かんねえぞ」という感じの質問が相次ぎ、しばしそれについての答えが続く。
この辺はカット。面倒だもん♪
「まっ、苦しんでた姉ちゃんが元に戻って良かった、良かった。」 瀬川俺もそんな感じかな……見た目は。 経若「ところで、何で麗子さんの呪縛が解けたんだろう? (まだ分かっていない)。」 「誰かが解いたんじゃないの?」 経若(GMに)誰かが解いたの? GMさあ? 「自然に解けるものじゃないし。那月って人じゃないか、やっぱり。」 瀬川「……他にいないよな。」 GMさあ、誰だろうねえ? 麗子プレイヤー(自分自身という意味)は七割くらい分かる。麗子は完璧に分かってるだろうけど。 GM言わないの? 麗子麗子は絶対言わない。
つづく…………
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