7.決断の時
GM沙紀は勝ち誇った様子で言うよ。「どうかしら? 勝負はもうついたと思わない? 今なら私の下僕にしてあげてもよくってよ。」……駄目だ。言葉遣いが何か変だな。 よくってよ、でもいいと思うけど(笑)。 GMまあ、とにかく君たち二人を誘ってくるよ。どうする?。 氷高「ふっ」と鼻で笑っておこう。 GM「そちらの坊やは?」 風斗「断る。」 GM「単純明快でいいわね。正しい選択とは言えないけれど。」 風斗「何?」 GMそれじゃあ、こちらの可愛い子犬と小鳥に命令を下そう。(大爆笑) クロ何となく風斗がいいな。 GMすると、茜は氷高先生に……って、炎と氷で相討ちパターンじゃないか!(笑)。 氷高やめてくれぇーっ! やめてよぉーっ!。 クロ(ぽつりと)さて、どっちが先かな。 GMおい。まさか知ってて仕向けたんじゃないだろうな(笑)
復讐のためなら仲間さえも利用してしまう。おそるべし、鬼犬クロ。(笑)
風斗二人を元に戻す方法はないの? GM術者が死ぬか、自発的に術を解かせるかしかない。後者は不可能だろうけど。 もう一つ佐藤さんの視線を受けて下僕になっちゃうという手も(笑) 楽におなり、とか言って。 GMそれは元に戻す方法じゃないってば。 氷高一撃で佐藤を倒せるでしょうか? GMダイス目次第だね、二人で一緒に攻撃すれば何とかなるかもしれない。 風斗じゃあ、やってみましょうか。 氷高やるしかないよな。 GMだったら、イニシアチブを取ってもらおう。代表一人に。 氷高嫌な代表だな……六! 風斗よかったぁ〜。
氷高と風斗の攻撃が佐藤の体に直撃する。氷の息吹が、爪が、そして牙と尻尾が佐藤を切り裂き、打ち砕く。さらに、荒れ狂う風が……。
GM(ころころ)……死んだ。黒い霧となって佐藤は消滅した。 一同おお〜。(安堵のため息。) 風斗じゃあ、元に戻った? GMうん。先ほどまでの沙紀への忠誠心は消えている。 クロしかし、残念だ。一度も茜に当てられなかったし(笑)。 GM沙紀は特に表情を変えずに言うよ。「あらあら、手荒な真似をしてくれるじゃない。この代償は高くつくわよ」けど、これで形勢逆転してしまったな。「純。」 「はい。」 GM「――殺しなさい」えーっと、知力で振ってみて。マイナス六の修正で。 絶対無理。 GMう〜ん。あまり言いたくはなかったんだけど……。
気がつくと、純は父に見られていた。
自分の生まれたままの姿を。
幼かった彼女にでも、父親の瞳に宿る異常な光は簡単に分かった。

――いや――

純は、その時の記憶を心の奥深くへ封じた。
誰にも知られたくない。
そして知りたくもない。
気がつくと、父の姿はどこにもなかった。
それ以来、母だけが彼女と共にいた。
自分の中にある「血」に目覚めたのは、つい最近のことだ。
純は人の魂を奪って生きることに耐えられなかった。
今度は忘れることなどできない。

――いや――

純は「母親のため」という免罪符を使って生き延びた。
誰かに助けて欲しい。
誰も助けてくれない。

――いやああああああああっ!――
とりあえず、風斗から離れる。 風斗「地浦さん……。」 「いや……」とか言って。 GMそうすると豊さんが「さあ、純。こっちへおいで……。」 攻撃します。 GMいきなりそうするか! 普通の人間じゃ避けられんし……。(ダメージをきいて)死にました。「じゅ、純……。」 やばかったなあ。 GMみんな言葉を失っている中で沙紀だけが「いいわ、いいわよ、純」と。 もう何が何だか分からなくなっちゃったから何もせずに立ってる。 氷高……どうすればいいんですか? GMそれは自分で考えてください。 クロ単純なクロは元凶を倒してしまえばいいと考えているんだが。 GMまあ、沙紀を殺すことで純が救われるかどうか……それは別問題だけど。 風斗沙紀さんを殺したら地浦さんは悲しむだろうし、地浦さんを傷つけるのも。 GMやさしいねぇ。 氷高二人とも容赦なく倒すという手もある。 GM氷高さんならそうする可能性があるね。本来の目的からすると(風斗を見て)彼を死なせるわけにもいかないし。 氷高できれば悪い感情を持たせたくない。 私たちには彼女の心に何が起こっているのか、分からないんだよね。 風斗うん。 ただ単に親を殺したとしか見えないし
純を殺すのか、生かすのか――プレイヤーは真剣に悩む。だが次第にプレイヤーの目は元凶たる沙紀へ向く。
クロ「沙紀を生かしておいたら、また自分のしたくもないことをさせられる奴が増えちまうかもしれないだろ!」 賛成。私も操られたから侮辱されたと考えちゃう。 GM「そちら二人の答えは、決まったようね。坊やはどう?」 風斗「地浦さんのお母さんを殺すことなんてできないよ。」 GM「そちらの方はどう?」 氷高「……お前を見逃すつもりはない。」 GM「これで結論が出ていないのは坊やだけになったわね。」 風斗「…………(悩)」 GMさあ、どうする? 風斗「……地浦さん、ごめんね。」 茫然と見てます。何もできない。 風斗地浦さんに聞きます。「どうしてお父さんを殺したんだ!」 「……あの男に生きる価値なんてないわ。」 GM「そう。豊は純を自分の道具としてしか考えていなかった。あなたたちは豊に操られれていただけよ。」 風斗攻撃できない。立ち尽くしてます。 クロ「確かに親父さんは道具として考えていたかもしれない。だけど、あんた自身も娘を自分の思い通りに動かしてたんじゃないのか!」 GMそれを言うのを待ってたよ。 風斗そうか……。 GM「まさか犬に言われるなんてね(笑)。でも、仕方ないじゃない。純は私が望むからという理由で人を連れてきた。自分の行動を正当化して、生きているのよ。そうでしょ? 純。だから、私がいなくなったらあなたは生きていけないわ。」 「お母さんは私を道具のようにしか思ってなかったの? お父さんと一緒なのね!」 GM「こう言ってほしい? あなたは大切な娘だって。」 「ひどいわ……もう誰も信じられない!」 一同出た〜っ!(笑) 「壬生くん……壬生くん、私はどうすればいいの? 助けて!」 風斗「地浦さん……」 GM「あなたを助けられるのは私だけと言ったはずよ。」
その時問答無用で茜の「烈火弾」が沙紀を襲う。この一撃で沙紀は気絶寸前になる。
「お母さん、やっぱり私は道具なの?」 GM「道具じゃないわ。あなたは玩具よ。」 一同玩具……(絶句)。 GM「あなたが苦しんでいる様子を見ると、私はとても嬉しいわ。あなたが苦しめば苦しむほど、あなたの魂はおいしくなるわ。」 「私は……。」 GM妖しく笑って「さあ、踊りなさい。私の可愛いお人形さん。」 「違う……私は人形じゃない!」と言って攻撃します。
……赤い血が飛び散った。

純は自分の手が母の心臓を貫いていることが分かった。
生暖かい血と肉の感触。

「どう……母親を殺した気分は……?」

青ざめながらも妖艶に微笑む沙紀が純を見つめている。
純は、幼い子供のように首を振った。
何度も、何度も。

「そう言えば父親も殺していたわね……この手で……。」

ごふっ。

沙紀の唇からこぼれた血が、純の右腕を紅に染める。

「私は死ぬわ……」

沙紀の指が純の頬をそっと撫でた。

「でも、これであなたも……。」
「お母さん……。」

泣きじゃくる純にもう一度微笑む。

「あなたも、もう生きてはいけないわ。」

沙紀の体が灰へ変わっていく。
脚から腰へ、胸へ。そして腕も。

「いや……いやぁ……」

純は沙紀の身体を捕まえようとした。
何度も、何度も。

「……あなたは、自分を殺したのよ……」

そして、沙紀のすべてが消えた。

――かすれた笑い声だけを残して。
第7章 了 第8章へつづく……
←prev 目次に戻る next→

© 1997 Member of Taisyado.