5.すれ違う心は……
GMでは、翌日です。学校から始めましょうか。「ん? 地浦は休みか? 風邪かなあ。」 風斗「地浦さんは休みなのか……」 (といいつつ純のプレーヤーを見つめる。) (風斗に)いや、私は知らないから(笑)。 GM「誰か地浦のところへプリントを届けてくれないか?」と先生が言うと「先生、私行きます。」と詩織ちゃんが。 純&風斗&茜やばい〜(笑) 詩織ぃ〜。 GMあ、ちなみに昨日純と一緒に帰った三人娘は何となく目つきが悪いね。 うつむき加減でにたっと笑ってたり。 GM表情も暗いし。で、由美ちゃんが 「ね、風斗。とりあえずさあ、氷高先生に相談してみない? 先生って……(「妖怪」と口だけ動かす)なんでしょ?」 風斗「う〜ん、そうだね。じゃあ、行ってみよう。」 由美ちゃん、気が利くぅ。 GMでは、場面は変わって数学研究室。 「失礼しまーす。」 風斗「失礼します。」 氷高あ……ちょっとぼ〜っとしてたけど「何だ、お前たちか。何の用だ?」 GM「氷高先生、実はあたしたち、すっごく困ってるんです。」 氷高「何だ? 言ってみろ。」 GM「えっと、この八十二ページの問二なんですけどぉ(笑)」 風斗&純違うだろーっ!
氷高に事情を説明する二人。まあ、実際にはプレイヤーはすべて知っているのだが、キャラクターの会話は必要である。そのお陰で風斗が依頼内容を誤解していることにも気づき、訂正できたのだから時間の無駄とも言えない。
氷高「なるほど……やはりそうだったか。」 GM「先生、気づいてたの? どうして教えてくれなかったの? ねえねえねえ(笑)」 風斗「……由美ってば」 由美に言うってのはまずいよ。 氷高「何となくだが気づいていた。確証はなかったがな。」 GM「ねえ、先生、手伝ってよぉ。」 風斗「先生。」 氷高「お前たちは関わ、関わ……(舌が回らないらしい)。」 一同(笑) GM「せ、先生っ?」 氷高「……関わるんじゃない。特に榊は特別な力があるわけではないからな。」 GM「それはそうですけど〜。でも、友達は助けてあげたいし。」 風斗(ぽつりと)「……友達?」 GM「何? 風斗。どーゆーこと?(笑)」 風斗(慌てて)「いや、何でもない。」 GM彼女は基本的にお人好しなんだってば。しくしく、みんな分かってくれない(笑) 氷高「(考えて)……分かった。私も力を貸そう。だが、榊は関わるな。壬生も榊を守ってやれ。」 風斗「はい。」 GM「それじゃあ、こうすればいいじゃないですか。風斗があたしを守ってくれるなら、あたしも風斗と一緒に……(笑)」 氷高「だから。お前は来るなと言っている。」 GM「ぶー」と不満顔だね。
そして、放課後。
風斗三人娘に昨日のことを聞いてもいいですか? GMそういうことは自分で決めよう。 風斗はいはい。 GMじゃあ、……徳山さんと島田さんと正本さんにしようか(笑)。
女性プレイヤーの名字を少し変えただけである。(笑)
風斗じゃあ、自分のはやりにくいから島田さんに。「島田さん、ちょっと待って。」 GMぎろっ。(睨みつける。) 風斗「(怯)昨日、地浦さんと一緒に帰ったんだよね?」 GM「だから、何?」 風斗「帰るとき何かあった?」 GM「別に何もないわよ。いちいちうるさいわね、あんたって。お節介なのよ。いい加減にしてくれない?」(乱暴な口調) 風斗え、あ、えぇ〜!(困惑) GMあのぅ、これはフィクションであって実在の人物とは関係ありませんから。 一同(大爆笑) 風斗じゃあ、その迫力に押されて「あ、ごめんね。それじゃあ。」 GM君の後ろで由美ちゃんが「押されてんじゃないわよ、風斗。」 (島田さんになり)「冗談じゃないわよ。ちょームカつくぅ。」
邪悪化というよりコギャル化である。(笑)
GMで、どうします。 風斗とりあえず、大社堂へ……。 GMあ、そう? 君の目の前を詩織ちゃんが通り過ぎていくよ。「壬生くん、さようなら。」 風斗「あっ! ちょ、ちょっと(大慌て)。葉沢さん、待って! 忘れてた、ごめん。」 GM「え? 忘れてたって何を?」 風斗「葉沢さん、地浦さんの所に行くんだよね。俺と由美も一緒に行きたいんだけど。」 GM「壬生くんと?(嬉しそう)」 風斗「うん。一緒に行こうよ。」 氷高そこに現れます! GMおお、いきなりですね。 風斗「あ、氷高先生。」 氷高「その届け物は、私と壬生に任せてくれないか?」
由美のブーイングと詩織の残念そうな視線があったものの、氷高は風斗と共に向かう。
GMでは、風斗と氷高先生の二人は地浦邸に着きました。洋館風の、ちょっとしたお屋敷ですね。獅子の形のノッカーはあるけど呼び鈴はないです。 風斗じゃあ、コンコンと。 GMすると扉が開いて、いかにも執事って感じの白髪と白髭の老人が現れる。「どちら様でございましょうか?」 風斗「あの、俺、純さんのクラスメートで壬生っていいますけど。」 GM「純さまの……では、こちらへどうぞ。純さまもお喜びになられることでしょう。」 氷高中へ入るの? 入ってほしくないんだけどなあ……。いいや、行っちゃえ。 GM「おや、後ろから来られる方は?」 風斗「学校の先生なんですけど」 氷高「氷高と申します。」 GM「左様ですか。ではこちらへ」で、君たちは屋敷の中に通される。ちょっと薄暗いかもしれない。二階の純の部屋まで案内される。「どうぞ。後でお茶をお運びしますので。」 「あ、壬生くん、どうしたの?」 風斗「プリントがあったから届けに。」 後ろを見て「氷高先生も……。」 氷高こくん、と頷いておこう。 「今日は由美さんと一緒じゃないんだ。」 風斗「あ、由美は置いてきた。(笑)」 物みたいに言ってる。 GMいないと本音が出ますね。 氷高そういうもんだよ。(経験のこもった声。)
純は風斗と楽しげに話す。話題は風斗の家族のことや由美のことである。風斗や氷高は純を探ろうとするが、そう言った妖術が使えず、歯がゆい思いを抱く。
一方の純も執事が運んできた紅茶に眠り薬が入っているのではと思い、密かに執事を問いつめるが彼はとぼけるばかりだ。幸い、薬は入っていなかったようだが。
お互いの思惑は明かされぬまま、話は続く。
風斗「地浦さんの家って、すごいお屋敷なんだね。」 「お母さんがこういうの、好きなの」 風斗じゃあ……「地浦さんのお母さんってどういう人?」 「……やさしくて、いい人よ。」 GM風斗と氷高先生は知力判定して。 氷高成功。 風斗……ファンブルです。(笑) GM氷高先生には純の言葉が嘘っぽく思えたね。表情もぎこちないし。で、風斗の方は純の表情が嬉しそうに見える。 風斗う〜ん。そうかもしれない。 GM君は母親という存在にかなりの幻想を抱いているからね。
「それじゃあ、俺たちは帰るよ。」

とりとめのない話を終え、風斗は椅子から立ち上がった。
ずっと黙ったままだった氷高も壁から背を離した。
内心のかすかな焦りを隠して。

「それなら、玄関まで送るわ。」
「お前は病気なんだろう。休んでいろ。」

氷高の言葉に、純は一瞬だけ悲しそうな表情を見せる。

「ごめんね、いきなり押しかけて。」
「ううん……。」

嬉しかった。純は今まで「友達」というものを持ったことがなく、一人きりだった。誰かと親しくなれば、母は必ずその「友達」を奪っていった。そして、言うのだ。

「あなたには私がいるのよ。」

純は怖かったのだ。自分の好きな人が消えてしまうことが。それも母の手で。
けれど――。

「――壬生くん……」

半ば無意識のうちに、純は風斗の手を取っていた。
風斗が驚いた顔で振り返った。

「地浦さん……?」

――助けて。壬生くん……。

言えない。言えば、風斗も母の手にかかってしまう。魂の奪われた脱け殻になるだけだ。
風斗もまた、言い出せぬ想いを抱いたままだった。彼女は何かを知っているのか、それとも……。
二人はしばらくの間、見つめあっていた。先に目をそらしたのは、純。ゆっくりとその手を離していく。

「……ごめん。壬生くん……。」
「地浦さん。」

何かを聞いてこようとする風斗を拒絶するかのように、純はぎこちない笑みを浮かべた。

「何でもないの。それじゃあ。」
「う、うん……」

そして。
純は一人きりで、泣いていた。
ずっと。
だから、彼女は知らなかった。
新たな贄が母の元に来ていたことを……。
第5章 了 第6章に続く
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