第7章 それぞれの理由
外灯で白く浮かんでいる夜の道を、二台のエレキ・カーが走っている。

後ろ側のエレキ・カーのハンドルを握っている宗祇が、不機嫌さを隠しもせずに言った。

「どうにも納得がいかんな」
「まだ言ってるの?」

助手席の愛美を宗祇がにらむ。

「この二人が戦力になるとでも思ってるのか? 逆に足を引っ張られるのがオチだ。ここで降ろすべきだろう?」
「そうでもないよ」

答えたのは、後部座席の紀家だった。

「連れていけば、何かの役に立つかもしれない。まあ、的場の説得は無理だとしても、ね」

紀家の隣には、叱られた小学生のように身を縮めている沖田と、ぼうっと窓の外を眺めている未紀が座っていた。
紀家たちに連行されてきた、というわけではない。
むしろ、彼ら自身が同行を志願したのである。
沖田は「武村くんを説得しますから」と懇願し、
未紀は「響一に役員のみんなを傷つけさせないようにするための囮にでもして欲しい」と申し出てきたのだ。

「それに、何も二人を野放しにしようって訳じゃないもの。必要になるまでは、ずっとこの車内にいてもらうわ。私達が離れても、車はノアが管理してくれるから、勝手に出られる心配も無いしね」
「ふん。まあいい。だが、万一妙な動きをした時には、容赦なく蹴り倒すからな」
「どうぞご自由に。二人も、その程度のことは分かってるよ」
「ならいいがな」

愛美が、腕時計を見た。

「さあ、そろそろよ」

時計は、今にも午後8時を指そうとしていた。

「終わらせるわよ。今夜でね」
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