第7章 それぞれの理由
「あ、お帰りなさ〜い。どうでした? 天草くんの居場所、分かったです?」

生徒会地下本部へ戻ってきた愛美、叶、紀家の三人を迎えたのはべるなの無邪気な声だった。その声を聞いて、三人の顔が落胆に曇る。

「駄目だったわ。風が出てきちゃってね、匂いが散っちゃったから……」

愛美は、逃亡した的場の行方を追うために出向いていたのである。
しかし、逃亡から時間が経っていたために、愛美の超嗅覚でも的場たちの行方をとらえることはできなかった。

叶が嘆息する。

「僕たちが不覚を取ったばっかりに……」

叶と佑苑は、<どらぐーん♪>の部室で眠っているところを、連絡がつかないことを不審に思った紀家によって発見された。
そして、二人には<どらぐーん♪>の部室に入る前からの記憶がなくなっていたのである。<ゆめうつつΣ>の効果だった。

「本当にこうなると鬼堂くんが動けないのがきついね」

紀家が言う通り、信吾さえ病にふせっていなければ、彼の<来歴感知>の能力が使えてさえいれば、事件はこんなに長引きはしなかったはずである。

「ところでさ、べるなちゃん。 沖田と津山の尋問の方は?」

「あんまし、役に立つ情報は入ってないみたいです。そっちが収穫なしとなると……ちょっと困っちゃいましたねぇ。未紀先生の居場所も、分かんないままですぅ」
「君島くんから連絡ないの?」
「さっぱりです〜」

べるなは、的場、および未紀の捜索を風紀委員会に依頼したのである。
しかし、鬼堂を失った彼らの動きは鈍い。副委員長の君島が指揮しているものの、ほとんど成果は上がっていなかった。

これでは今日中の解決は無理かもしれない。
的場の計画はほぼ阻止したも同然だが、人質に取られている龍之介と、幼児のままの信吾をこれ以上放っておくわけにはいかない。
四人は悩む。
しかし、いくら悩んでも一向に前途にかかった霧は晴れない。
もう駄目なのだろうか、と思いかけたその時、光明は向こうの方からやってきた。
それは、愛美たちにさらなる苦悩を強いるものだったのだが。
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