終章 そして、始まる
GM氷高先生。君はある洞窟の中を歩いています。やがて、周りがすべて氷になっている場所に出ました。その氷の中には君の愛する人が今も眠っています。 一同おおお……(驚) やっぱり。 氷高「梢……君を必ず助けてあげるからね。」 風斗氷高先生が……。 あのクールな氷高が……。 GM風斗。家の前で由美ちゃんが待っているよ。「お帰り、風斗。」 風斗ちょっと元気なく「ただいま。」 GM「終わったの?」 風斗「一応は。」 GM「……地浦さんは、やっぱり?」 風斗「野牟田さんの中に入ってるよ。」 一同(笑) GM何か誤解されそうな言葉ですが(笑)、由美ちゃんは分かったようだ。「ねえ、風斗。」 風斗「ん?」 GM「……泣きたい?」 (笑)こ、これは……っ! 風斗「え?」と聞き返す。 GMちょっとそっぽを向きながら「あたしは泣き虫なんて大嫌いだけど……今だけは泣いてもいいよ。」 風斗「うん……。」と言って、ぽろっと。 GM次はクロ……と言いたいところだけど、拓矢君をやってもらおう。 クロ→拓矢おおっ? GM君が目を覚ました場所は、一言で言うと奇妙だね。岩が宙に浮かんでいたりしてるし。君もその内の一つに寝ている。 拓矢うん。 GMすると「目が覚めた?」といおう声がして君にクロが事故にあったと教えてくれた女の人がいるね。ただ、あのときと違って白い和服を着ているよ。 拓矢「お姉ちゃん、ここは?」 GM「ごめんなさいね。あなたを騙すつもりはなかったんだけど。」 拓矢「え?」 GM「でも、もうすぐ帰してあげるから……ところで、あなたはあの犬が好き?」 拓矢「うん。」 GM「妖怪なのに?」 拓矢「妖怪でも何でも、僕はクロが好きなんだよ。」 GM「……あなたはとても純粋な心を持っているのね。羨ましくもあるけど。」そう言うと、巻物を君に手渡します。「あなたにこれをあげるわ。中を見てご覧なさい。」 拓矢小学生に読める字かな? GM全然、読めない。でもなぜか理解できるんだ。「それには阿部一族に伝わる術の数々が書かれているわ。勉強するといいわ。あなたにはその素質があるし。」 拓矢「でも、どうして僕に?」 GMその質問にはあいまいに微笑むだけだ。すると突然、その女の人の手が泥人形のようにぽろぽろと崩れだす。で、女の人は素早くお札みたいな紙を取り出して呪文を唱えると、お札が手になります。「嫌なところを見せてしまったわね。」 拓矢「大丈夫なの? お姉さん。」 GM「限界かもしれない……私の体も。時間がないわ……。」と言って、「確か拓矢君と言ったわね。あなたには見守ってもらうわ。阿部の血を引く者として……」 拓矢うーん。十二歳には言ってる意味が分からないだろうなあ。 GMで、女の人が何か言うと君はまた眠るんだけど、彼女がこう呟くのが聞こえます。「見ていてね、私の最期の戦いを。」 GMもう一度、風斗。君は再び夢の中にいます。そして、また「風斗、風斗……。」というお母さんの声が聞こえる。 風斗「母さん?」 GMその声で幸穂さんの姿が現れます。この間と同じように、鎖につながれてる。さらに、幸穂さんと三角形を描くような位置に二人、闇から現れる。 風斗知ってる人ですか? GM一人は由美だ。だけど目が虚ろで君を見ていない。 風斗「由美!」 GM答えません。もう一人は由美が髪を下ろして、もう少し大人になった感じだ。彼女も目が虚ろだよ。そして、幸穂さんが言います。「風斗、私を殺して……。このままでは大変なことになってしまう。」 風斗「母さん、それはどういう意味?」 GMその時、君と幸穂さんの間に一振りの剣が闇から浮かび上がる。君は直感で分かるよ。それが血の証だと――。 GM次は茜。マンションの鍵はかかってる。 じゃ、呼び鈴を鳴らして。 GMでは扉が開いて陵が出てくる。「帰ってきてくれたんだね、茜。」 「うん……。」 GMで、中に入ると、「茜、もうどこにも行かないでくれ。」 「さっきと言ってることが違う。」 GMぎろっと睨む。「僕を信じないのか?」 「どのあなたを信じればいいの?」 GMそうすると、ピンポーンと呼び鈴が鳴りますよ。 誰? GM舞花です。戸隠へ行ったはずのね。 ええっ! とりあえず、ドアを開けちゃいます。「舞花!」がちゃっ。 GM「茜、ただいま。」 「もう行ってきたの?」 GM「うん。わたしは大丈夫。ところで誰かいるの? 男物の靴があるけど。」と言いながら強引に中に入っていきます。 はい。 GM舞花は陵を見て、ふっと笑う。 「茜、あなた、この人が誰だか知ってる?」 「上総陵よ……。」 GMその瞬間、舞花は妖怪の姿に戻り、手にした薙刀で君を切り裂く! 「違うわ。そいつは私たちの仲間……。」 「仲間?」 GM(突然)「ふぉっふぉっふぉっ。」 一同(笑) 何かと思った。 GM玄関から老人と高校生くらいの美少年が入ってくる。麗子さんや瀬川さんが言っていた連中だね。「さてさて、ご苦労じゃったなあ、日羽茜殿。そいつの精神が安定しておらんかったようじゃからな。」 「どういうこと?」 GM「こいつは上総陵などという人間ではない。戦争で死んでいった者たちの想いから生まれた「亡霊将校」という妖怪じゃ。」 「それじゃあ、私を抱きしめてくれたその腕も! 見つめてくれたその瞳も! すべて嘘だったというの?」 GMうおおおっ!(喜んでいる)「嘘とは言えんよ。上総陵の想いもあるのじゃからな。」 「それなら、私にとって彼は上総陵だわ。」 GM「ほう。しかし、こいつはどう思っておるかな?」と老人が言うと、陵の姿が変わる。「殺す殺す殺す…・!」 「陵にだったら……」と涙を一筋。 GM「健気なことよのう。じゃが、今お主を殺してしまっては面白くない。せいぜい苦しむがよい」と言って、老人は頭蓋骨を取り出したかと思うと、全員の姿が消えます。舞花も陵もいなくなりました。
おおおおおおおぉぉぉぉぉぉん!

突然、夜に眠る諏訪の大地が咆哮にも似た震動に包まれた。いや、震動というより脈動と言った方がいい揺れ方だった。

「――な、何だっ?」

風斗はベットから跳ね起きた。今まで見ていた夢のせいか、汗をびっしょりとかいている。

「風斗! 一体、何なのよっ!」

扉が開いて由美が転がるように入ってきた。というより、実際転がっている。震動のせいで立つのもやっとである。

「俺にも分からないよ。」
「もうっ!」

その時、カーテンの向こうから光が風斗の目に漏れ見えた。太陽光とは違う、金色の光。
素早く駆け寄ってカーテンを開けた瞬間、二人の目はあまりの眩しさに眩んでしまう。

「何なのよー!」

由美がしゃがみこんだ。
風斗は腕で庇いながら、光の中心に目を凝らし――そして息を呑んだ。

「龍――!」

そう、それは龍だった。諏訪湖上空を駆け巡り、猛々しい咆哮をあげている。正確に言えば光でできた龍だ、と風斗は思った。稲妻も龍の形に見える時がある。ちょうどあんな感じだ。
だが、これが諏訪地方に眠るという「龍」だとすると大変なことになる。かつて戦国時代にもその「龍」を巡って妖怪たちの戦いが起こっている。その時は先代「大社堂」の妖怪たちが邪悪な妖怪に勝利したが、「龍」については謎が残るまま、現在のリーダーである真樹麗子にすべてが託されたのだ。それ以後、「大社堂」は「龍」の居場所と謎を探るために活動してきた。
それがこんな時に現れるなんて――風斗は唇を噛み締めた。
肝心の麗子は瀬川と共に戸隠へ行っている。今、諏訪に残っているメンバーだけでは手の打ちようがなかった。

「……く……」
「由美?」

不意に聞こえた苦しげな声に風斗は振り返り、再び息を呑んだ。
由美の全身が、龍と同じく金色に光り輝いている。神々しいまでの光の中で由美は荒い息をついていた。

「由美! 大丈夫か、由美!」

慌てて駆け寄ってきた風斗に無理矢理笑みを浮かべてみせる。

「だぁーいじょーぶ♪ ……けど、あたしもついにスーパーサイヤ人になっちゃったかぁ。」
「なに馬鹿なこと言ってるんだよっ!」

風斗の声が悲鳴に近くなった。

「……ホントに大丈夫。大丈夫だから。」
「でも……」
「……こら。」

由美がふるえる指で風斗の頬を弾いた。

「情けない……顔、しないでよ……ね。風斗には……やるべきことがあるでしょ。」
「やるべき……こと?」
「瀬川さんに、知らせるのよ……携帯電話を持って……た、から……。」

風斗は顔を上げた。確かに瀬川さんは……。

「……早く、風斗……」
「分かった。少し待っててくれ、由美。」

目を閉じた由美を自分のベッドに寝かせ、風斗は階段を跳ぶように下りた。あせりながらも慎重に電話番号を押してゆく。
呼び出し音が聞こえる。二回、三回……。

「……早く……!」

小さな叫び声と同時に音が途切れた。

――はい、もしもし。

聞き慣れた男の声を耳にして、風斗は心強いものを感じずにはいられなかった。
しかし。
その瀬川の声にも焦りが含まれていたことに風斗はまだ気づいていなかった。
戦いは、再び始まろうとしている。
キャンペーン第一部 第三話 了 第四話につづく……
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