プロローグ
愛。
人の想いの一つ。美しく、純粋なものだと思われている。
そうだろうか?
……いや、違う。それだけではない。
美しく純粋であるがゆえに、愛は深い闇へと通じているはずだ。
歪み。
ねじ曲がり。
ばらばらになる。
それもまた、「愛」なのだ。
しかし、人は認めようとはしない。せめて、愛だけは輝いてほしいから。
気づいていないのだ。
そう願えば願うほど、自分の心に闇が生まれるということを。
そして、気づいた時には自らが生み出した闇の中に呑み込まれていく。
もう、遅い……。
だから、認めなくてはならない。
自分の中にある闇を。
愛のかたちを。
それができなければ……。
愛。
人の「想い」の一つ。
光と闇の狭間――心にあるもの。
© 1997 Member of Taisyado.