5.
目の前に<塔>が見える。愛美は少し歩調を速めた。

――たぶん<魔術師>は分かってるはず……。

使える手段はすべて使ってでも、防がなくてはならない。
獅子のノッカーに手をかけた。

――蒼明学園高等部生徒会の名にかけて。
GM/影浦「お待ちしておりました。」 愛美「久しぶりね。」 GM/影浦「最近は平穏でしたので、本当にお久しぶりですな。」 「早速だが、<魔術師>はいるかい?」 GM/影浦「もちろんでございます。こちらへどうぞ。」
通されたのは整備室。周囲には見たこともない機械が並んでいる。いくつか置いてある水槽のようなものからは、時折、ぼこぼこ、という音がしている。
愛美あやし〜い。紫色の液体が入ってるとか言わない? 龍之介あやし〜い。 GMいや、緑色です。 一同あやし〜い。 時々、紫色。
<魔術師>は奥の机で、パソコンに向かっていた。
GM/魔術師「来たか。」 愛美「……私たちが来るのを予期していたようですね。」 GM/魔術師「<運命の輪>は常に私と共にあるからな。」 愛美「そうですか。では、聞きたいこともお分かりですね。」 GM/魔術師「これを見よ。」と言って一際大きな水槽を指すよ。
水槽には透明な液体が入っており、中心に球体が浮かんでいる。球体は銀色だが輝くわけでもなく、金属とも肉片ともいえぬ、不気味な感じがする。
愛美「これは……なに?」 GM/魔術師「<愚者>だ。以前、お前たちがあまりにも無茶な行為をしでかしてくれたおかげでな。」 愛美「……まだ、再起動には時間がかかりそうね。」 GM/魔術師「今、ちょうど再起動が始まるところだ。」 愛美「……半年以上、かかったのね。」 GM/魔術師「ようやく形だけは元に戻った。良く見ておくがいい。」というと、また机に向かうよ。
水槽の泡の量が徐々に増え始め、それにあわせたかのように球体が脈動する。次第に、球体から溢れるように肉が出てくる。
どくん。どくん。……目を背けたくなるなぁ……。 ゆかり背けたいけれど背けられない……。 GM泡がもっともっと多くなって、球体を隠すようになる。 GM/魔術師「頃合いだな。」というと、いつの間にか見たことのある子供の姿になっていますね。 GM/愚者「あれぇ〜。<魔術師>以外の人たちがうろちょろしてるなんて めずらしいね。この間、紀家霞とかいう子が来てたけどさ。」 GM/魔術師「どうだ、体の方は。」 GM/愚者(水槽の中で)手を動かしながら「う〜ん。まぁ、まだちょっとなじまないかな〜。」水槽ごしなんだけれど、声はくぐもってないかな。 愛美「この間は、無茶させてごめんなさい。」 GM/愚者「まぁ、いいよ。<魔術師>の命令だからね。」 愛美お蔭様で鬼堂くんは楽しい生活を送っているわ。 一同(笑) GM/愚者「あぁ、聞いてるよ。紀家霞って奴から。」 愛美「あぁ……。」 GM/愚者「でもさぁ、裸っていうのは、ちょっとやだなぁ。」 GM/魔術師「我慢しろ。まだ服装までは調整できんのだ。江島愛美、これが<魔宝>のつくり方だ。」 一同(笑) GMやだ、何か3分クッキングみたいで……。 佑苑ちゃんちゃらちゃららら、ら、ら、ら〜♪(キューピー3分クッキングのテーマ) 宗祇道具があれば誰でも作れます! GM最初はコアを核として、そこから生まれる。 鬼堂半年くらいかかります。これが半年経ったものです。 一同(爆笑) 龍之介やぁるぅ〜(笑) GM<魔宝>の場合は、原型があって……つまり、<愚者>の姿や性格のベースになっている人間がかつて存在した。それを銀色の球体みたいなものにプログラミングし、そこから肉体を構成するようにしているというわけです。 「あの"兵庫守"も作られる過程は同じということかい?」 GM/魔術師「"裏生徒会"の官職も<魔宝理論>とほぼ同じ考え方だ。」 愛美「<魔宝理論>って何かに性格や姿を埋め込む、という考え方で いいのかしら。」 GM/魔術師「基本はな。後は<原型>の意志が<魔宝>の能力を決定する。」 愛美「……"裏生徒会"との違いは?」 GM/魔術師「<魔宝>の場合は、初めに<原型>があり、それに合わせた形の<魔宝>が使われている。」 愛美「なるほど。」 GM/魔術師「"裏生徒会"の場合は<官職>を予め作成しておいてそれに合う人間を捜している。」 龍之介(笑) GM/魔術師「少しずれた作り方のため、失敗もしやすい。元に<原型>がない分、固定化される能力も不安定だ。」 愛美「……ということは、私たちが今相手にしているのはまさしく不安定なのかしら。」 GM/魔術師「そうだな。本体は、鬼の面、だ。あれが"兵庫守"だ。肉体はおまけみたいなものだ。気にすることはない。成長の過程で生まれてしまったものだ。」
「生まれてしまったもの?」

<魔術師>の顔が、一瞬、ゆがんだ。

「元に<原型>がないので無から生命を紡ぎだし<官職>の安定化を図っているのです。<官職>に当てはまる人間が見つかり次第、その生命は切り捨てられる……。」
「影浦さん、ちょっとよくわからなくて……」
「<官職>を使うまでの人形といえば、分かりやすいでしょうか。」
愛美「じゃ、あれは、人形が実際に意志を持ってしまったってこと?」 GM/魔術師「本来なら、勝手に動くということはない。滅多にありえることではないと思うが。」 愛美「目的がわからないのも当然、ね。」 GM/魔術師「あぁ、あれはまだ生まれたばかりだ。意志は持っているが方向性はない。目的がないのだ。だから、<官職>の目的である能力の奪取と捕獲、それだけを求めている。後は、使用者の安全の確保。」 叶&愛美「使用者の安全!?」 GM/魔術師「"右近"から聞いていないか? あれは庫門蒼馬の官職。」 愛美「でも、庫門くんは自分の意志で使う事を拒んでる……。」 GM/魔術師「今はな。だが、未来においてそれが続くとは限らん。」 愛美「安全を守る、って……?」 GM/魔術師「<魔宝>や<官職>も基本的に使用者を守る。鬼堂に与えた<正義>しかり、佑苑を勝手に守っている<太陽>もしかり。無論<女帝>もそうだ。だが、今の<官職>には<原型>がない分、少々乱暴な方法を取るようだな。」 「いずれ、敵の手に落ちた庫門くんを取り返しにくるということ か?」 GM/魔術師「いずれではなく、すぐにでも来るかもしれない。」 佑苑来るのか!? GM/魔術師「無論、それは庫門蒼馬が<世界律>の"改新"を……。」 「願った時にやってくるということか。」 愛美「それまでは、他の人を狙うことはあるのかしら。」 GM/魔術師「ありうる。今の『あれ』には目的がないのだから、<官職>の目的を優先させるだろう。」
次の質問に移る。
愛美「中条先輩と君島くん、どちらも能力を封印したの?」 GM/魔術師「封印した。それを目覚めさせて奪おうとしたが、途中でお前たちの干渉に遭い、途中までで止めざるを得なかった。おそらく……。まぁ、これはどうでもいいことだ。」 愛美これで止まるのがやだ……。 止まるなよ……。 GM/魔術師「気にする事はない。あの"兵庫守"を倒せばよいのだ。」 簡単に言うな!(笑)
奪われた力についての質問に話を変える。
精神剣を出して言うよ。「奴を倒せば、この剣の長さは戻るのか?」 GM/魔術師「戻る。」 愛美「奪われた力はまた元に戻る……。」 「ということは、また封印され直す?」 GM/魔術師どうやら、私はお前たちの頭脳を甘く見ていたようだ。 一同(笑) GM/魔術師「そういうことだ。おそらく<力>は元に戻る。再度、封印しなおしたいのならば、頼まれればやってやらない事もない。むしろ戦力が増えたともいえなくはない。<力>に振り回されなければだが。」 「"裏生徒会"のことだし、いずれ庫門くんが"改新"を望んでしまうかもしれないな。」 愛美「その前に止めた方がよいのかもしれない……"兵庫守"だけを 倒すのなら。」 GM/魔術師「質問は終わりか。」 愛美「分かるのであれば弱点を。足を止めることができない以上、難しいわ。あの跳躍力と馬鹿力ではね。」 ぐふっ。 GM/魔術師「今の"兵庫守"についている勝手に作られた人形は、人間でない以上運動能力も並ではない。だったら……。」 鬼堂「……人にしてしまえば……?」 GM/魔術師「そういうことだ。」 ゆかり誰の声だ、誰の声だ、誰の声だ!?(笑) 一同(笑) GM/魔術師「"兵庫守"の取り付く先は決まっている。なら、答えはもう出ている。そういうことだ。」 佑苑何かかわいそうだなぁ、庫門くん。 愛美「彼が受け入れてくれるかどうかは難しいけどね。」
質問が一段落したので、叶は……。
<愚者>を見ているよ。 GM/愚者「何だよ、何か、文句あるかぃ!」 「全然。始めまして。」 龍之介妖しい〜。 GM/愚者「妖しい兄ちゃんだなぁ〜」 GM/魔術師「用はそれだけか。私は忙しい。」 愛美「……一度戻って相談しないとね。本心から願わないといけないから、難しいけれど。」 「"裏生徒会"の人間が精神汚染しかねないな。」 GM/魔術師「それはない。安心しろ。<世界律>の"改新"を望むには強い心が必要だ。同時に脆い心でもあるが。他者に支配された心では"改新"は行えない。」 「脆いとは思わないけれど、そそのかされたり……。」 GM/魔術師「強すぎる心と言った方がよいか。」 龍之介強すぎるのも問題だな。 GM/魔術師「話は終わりか。」 愛美「ありがとう。<魔術師>の提案は難しいけど。」 GM/魔術師「ならば、あの状態の敵と戦うんだな。」 愛美「戻ろう。」 「地下生徒会本部へ。」 GM/魔術師「佑苑若杜に伝えておけ。少しは本気を出せ。そうしなければ確実に死者が出ると。」 佑苑うわ〜ぉ。 GM/魔術師「あのままではかなり無謀だな。」 佑苑うっはーっ。 GM/魔術師「<魔宝>の実験台にすら値しない。<太陽>はよほど気に入っているようだが、はっきり言って私は反対だ。」 「じゃぁ、伝えておこうか。」 GM/魔術師「最後に、江島愛美。」 愛美「はぁ。」 GM/魔術師「いや、なんでもない。」 一同うわぁーーーーーーーっ(笑) GMというわけで場面を変えます。(笑) 秘密だ、秘密だ(笑) 龍之介二人だけの秘密だ。
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