通されたのは応接間と同じくらいの広さの部屋だった。
その中央には機械が置いてある――小さな塔のようだ。
GM/魔術師これは私の操る22の<魔宝>の一つ<世界(ザ・ワールド)>だ。 宗祇「ノアに侵入してきたときに使ったものか。」 GM/魔術師「そうだ。これなら、電脳世界に侵入することができる。……お前たちのパーソナルデータはすべて打ち込んである。」 一同(苦笑) 愛美「……調査済みってことね。」 GM/魔術師「影浦は優秀だからな。」 ゆかりということは、プレイヤーの知らないことも知っているのね 一同(笑) GM/魔術師「とりあえず、このヘッドマウントディスプレイをつけろ。つけたら、そこに座っていろ。」
そこには、ふわふわ浮かんでいるいすがあるよ。
「アトラクションですか〜?」(笑) 愛美「20年くらい前からディズニーランドってあったじゃなぁ〜い♪」 GM/魔術師「言って置くがこれは遊びではないからな。電脳世界で死ねばお前たちの精神も死ぬ。」
ウィーーーーン。
「かの者たちを新たなる<世界>へ。」
魔術師が唱えた瞬間。
全員の意識が一瞬途切れた。
――私も後から行く。
無意識化に働きかけられたか、魔術師の声が聞こえた気がした……。

目を覚ますと、そこは闇。
そこは、光の筋が走る電脳世界。
辺りを見回すがそれ以外は何も見えない。

「ちょっと遠いからね〜♪」
「誰ですか??」
「あたし、<世界>。よろしくね♪」

天から降ってきた声の主が、佑苑の問いに応えるように降りてきた。
年は同じくらいのようだ。

「あたしねぇ〜、名前ないのよねぇ〜。」

ショートカットの頭に手をやりつつ、彼女は言った。

「魔術師ったらさ、<月>や<隠者>には名前つけて〜、現実世界に私、身体ないからぁ〜、名前ないのよ〜。」
GM/世界「つけてくれない??」 宗祇「天草と鬼堂はどこだ。」 GM/世界「お兄さん,、そんなに眉間にしわ寄せてると、跡がついちゃうわよ。」 ゆかり「今のところ『<世界>ちゃん』って呼ばせてもらうわね。」 GM/世界「誰も名前つけてくれないから<世界>でいいよ。」 宗祇「……千歳。」と言って横を通り過ぎます。 GM/世界「それは、名前?」 宗祇「俺の母の名だ。」 一同うぉーーーーーーーーーーーっ!? 愛美「じゃ、千歳ちゃん、行きましょうか。」 GM/世界「じゃ、私の名前は千歳ってことでよろしく♪」
というわけで、一頭の巨大な狼――<世界>の分身――に乗り、天草と鬼堂がいると思われる場所に向かう。
魔術師も合流済みだ。
一瞬で、二人を目で確認できるところまでたどり着いた。
佑苑「お久しぶり!!」 龍之介「遅いぞーー。」 GM再び、見える形を取った<世界>が、
「やっほー。私、千歳っていうのー♪ あの人(宗祇)のママ!!」
一同(天草に向かって)ガーーーーーーーン!!(爆笑) GM「……の名前。」 龍之介ママ、ママ、ママ、ママ、ママ、……宗祇!! GM/千歳「あれ? 違ったっけ? とりあえず、よろしく〜♪」 龍之介「よろしくぅ〜♪」
この明るさに呆気にとられたか法本も遠野先生も呆れ顔だ。(苦笑)
GM/遠野「わざわざ、こんな大勢で押し掛けて何の用ですかな。」 愛美「天草くんと鬼堂くんを返して頂きに参りました。」 GM/遠野「構いませんよ。あの二人をどうこうするつもりはありませんでしたから。」 GM/法本「そんな! 先生!!」 愛美「……そして、元に戻してもらいましょうか。何の罪もない生徒たちを。」 GM/法本「やだ!!」 鬼堂「まだ、そんな戯言を抜かしているのか!」 GM/法本「だって、先生が……先生が非難されるのを黙って見てる訳にいかないじゃないか。そんなの男じゃないよ!」 鬼堂「そうか、そのためにみんなをあのような状態にしたというのか。それでいいと思っているのか。それがお前の正義か。よく分かった。 GM即決されてしまったぞ……!? 鬼堂「お前も薄々気づいているだろう。自分がいかに勝手な理屈をこねているかと言うことを。」 GM/法本「どうしろってんだよ!」 愛美(甘い声で)「自分の力で何とかできなかったのかな? 何でこの力を使ったのかな?」 ゆかりまさかその力が自分の力だと思っているわけじゃないでしょうね。 GM/法本ぎくっ!! 鬼堂転がり込んできた力を使って自分が強くなったとでも思ったか!! GM/法本「それは……。」 愛美(甘い声で)「そういう力を使っても♪」
(冷めた口調で)「李先生は喜ばない。」
鬼堂所詮貴様は自分だけの正義を振りかざし、好き勝手なことをしているだけにすぎんのだ!! 一同(笑) 愛美あついでしょ〜? 龍之介(頷く) GMもーーダメ。幼い仁くんには、反論できません。
問題は法本ではない。
<明法博士>遠野高明である。
愛美「あなたがなぜ"裏生徒会"に力を願ったのか教えていただけませんか?」 GM/遠野「彼ら(龍之介と鬼堂)には、話しましたが……私も子供みたいなものですよ。助けたいのに助けられない……だから力を望んだのです。」
「助けられないと思ったのはなぜですか?」

――分からないわね……。

遠野先生は、生徒にだけでなく、教師の中でも、評判はいいようだ。
ということは、基本的な教師としての考えができているのだろう。

――なのになぜ!?

「もう、私の目は見えません。たったそれだけのことで。助けられないことを知ったときにはさすがに自分を情けなく感じましたよ。」

――どうして、こんな……まさか! 歪んでる!?

「たったそれだけのことで助けられないと知った理由を聞かせてください。」

抑えてはいるが、彼女の言葉の端々からは、怒りが溢れていた。

――それだけで歪んでるんじゃないわよっっ!!
GM/遠野「私はね、江島くん。あの子がどうしているか、どんな顔をしているか、どんなことを思っているか分からなくなってしまったんだ。目が見えなくなっただけで。たったそれだけのことで。情けないことだよ。」 愛美「どう、思っているかが分からなくなったんですか? それはあなたが今まで目に見えるものだけで判断してきたからではないのですか? 声を耳で聞くことはしましたか?声を心で聞くことはしましたか?教師ってそういうものでしょ??」 GM/遠野「……そうでしょうな。」 愛美「目で見えることだけに惑わされては教師は務まらない。鬼堂くんがいる前で申し訳ないけど、『茶髪だから?』って、その中身が悪いってことはありませんよね?」 鬼堂そうなのか。(頷く) 一同(爆笑) GM価値観植え込まれてるよぉーーー。 GM/遠野「確かに、そうでしょう。だが、闇というものは人の心を狂わせるものです。それに私はどうしても抗いきれなかった……。」 宗祇「……李先生がどう思ったか考えたことはあるか。あんたがこう言うことをしていたと知ったときにどう思うんだ?」 GM/遠野「宝生院宗祇くん。君はまだ若い。」 宗祇「だが、自分のことを尊敬しているものに対して、虚勢を張ってもよかったのではないか。」 GM/遠野「……やはり、こうするしかないでしょうな……“電脳教授”。」 ゆかり「まだ、李先生にはあなたが必要だと思うけどね。」 龍之介「……先生、分かってるだろう? あんたのやってることは単なる現実逃避にすぎないんだよ! 教員生活続けていく上で何度も今の状態に陥るだろう。今の状態を乗り切れなきゃ、これからだって乗り切れない。それを支えてやるのがあんたの役目だろ!! GM/魔術師「無駄だな。その男はすでに……」 GM/遠野「やめてもらいましょうか。あなたはどうやら何もかも知っているようだ。だが、それは言わないでほしい……」
と言うわけで戦闘に入ります。
なんだか、もやもやとしたまま(苦笑)戦闘に入る。
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