GM鬼堂くんはどうする? 鬼堂きっちり部活終わらせた後、生徒会室に向かいます。
地下生徒会本部・図書室。
鬼堂は文芸部の棚から「黒仮面」の掲載号を手に取った。

――著者は、深尾淳一……ん? 確か……。

数少ない去年の三年生だ。覚えていないわけがない。

――文学部に進学したはず……後で"ノア"に任せた方が確実だな。

鬼堂はゆっくり椅子に座ると「黒仮面」を読み始めた。

――誰にも愛されぬ「心を持つ機械」の話か……。

読み終えた冊子をゆっくりと閉じる。

「……最期は、逃げ込んだ館に火を放ち炎とともに消える、か。華と散ったのだな。」

自分の声が耳から聞こえたことに気づき、辺りを見回すが、幸い周囲には誰もいない。

――江島君に聞かれたら、何を言われるか分かったものではない。

ほっと胸をなで下ろす。

――……美術部と文芸部には、さして関係はない。

顔を上げ、ちらりと"ノア"を見る。
そこには20数個の赤い点が、鈍く輝きながら動いていた。
生徒会の役員バッジは、発信器になっているのだ。

「……連絡を取らねばならんな。」

鬼堂は腕時計のふたを開けた。
GMということで。3人集合となりました。 愛美情報の交換は行われたってことで。 GMはい。そうすると。鬼堂くん。分かるけど、高雄くんに送られた2通の手紙が作品の中に出てくるものと同じです。 愛美作品に同じように出てくるの? GMそう。制作者――いかれたマッドサイエンティストに"黒仮面"が送った手紙。内容も同じです。 鬼堂その後小説では? GM娼婦が傷つけられ、妹が傷つけられています。本当は他の友人も傷つけようと思ったんだけど、失敗して館に逃げ込んで火を放つという……。 有子う〜ん。
小説と現実の関係性が全くプレイヤーに伝わってないと気づいたGMが図示しながら一生懸命に話す。
GMから図示された内容は以下の通り。
  小説 現実
今日 絵が切り裂かれる
1日目 娼婦  
2日目  
3日目 黒仮面の死
(館に火をつける)
切り裂き予告
GMえっと、2通目の手紙の「大切なもの」というのが何なのかは小説では明らかにされていません。 愛美読みとることすら出来なさそうなの? GMう〜ん。じゃ、知力で振ってみて。 愛美うわあぁぁ……。(ころころ)クリットぉ〜!!
いかれたマッドサイエンティストの娼婦、妹、妹の恋人、刑事の4人の中に"黒仮面"の名を語っていた人がいると読み取れたようだ。
愛美小説に似せてるって事は、小説と同じなんだよってことを見せたいからかなって……考え過ぎかな〜。滝之水くんの家族構成はどんなんですか? GM両親二人。妹一人。妹は、中等部1年で美花。 有子かわいい名前だ。 GM……と言うところでどうします?
時刻は夕方近く。
絵が見たいということで、滝之水に電話をかけることとなったが、愛美はあまり乗り気ではない。
鬼堂が電話をかけるが、
「相手が黙ってるくらいで慌てていては日本男児はつとまらん!」
と何も言わないので沈黙が続く(苦笑)。
見かねた愛美が……。
愛美「貸して」
「もしもし。江島ですけど。三人で検討した結果……。」
GM/滝之水「三人!?」 愛美「えぇ。……私の予想ではあなたを今日追い抜いていった子が一人いるんじゃないかと思うんだけど。」 有子かぁぁぁ〜〜っ。 GM/滝之水「追い抜いていった女の子? (ころころ)あぁ、何か妙に慌てた女の子がいたなあ。」 愛美「やっぱり(苦笑)。で、その子と3人でやってるんだけど……それはおいといて。絵が関係あるんじゃないかって。見せてもらえないかしら。」 GM/滝之水「本当に申し訳ないんだけど、絵だけはちょっと……。」 愛美「そう……じゃあ、どんな絵なのか教えてもらえないかしら?」 GM/滝之水「……僕の家族の絵です。」 愛美どうする? ってみんなの顔を見るけど。 鬼堂じゃ、受話器とって。 愛美あ、取られた。 GMたぶん、ここにある電話なら受話器無くても話せると思うけど。 鬼堂じゃ、最初にいってくれよ! GMたぶん、そこまでハイテク化は進んでると思うんで。 鬼堂はい。じゃ、
何を言ってるんだ! 君は自分の絵を守りたいんだろ! ならば、我々を信用してもらいたい。我々は君の絵を、何よりもこの学園の秩序を守るために尽力してるんだ!
一同(笑) GM/滝之水すごいっっ!
「風紀委員長の言うことも分かりますが……すみません。」
愛美「じゃあ、見せられない理由を教えてもらえないかしら?」 GM/滝之水しばらく黙ってた後で
「妹には秘密にしておきたいんです。噂はどこからでも漏れてしまうものですから……信用していないって訳じゃないです。」
鬼堂俺を信用してくれ。この命に代えてでも、その約束は守る! 誰にも話さん! もし、その約束破れた場合は、この腹、かっさばいてでも……」 一同(笑) 愛美「無理に押しても……」
それでも、「鬼堂信吾、心からの説得」はつづく。そして。
GM/滝之水「……明日の放課後でいいですか?」 鬼堂「協力に感謝します。」 GM/滝之水信用します。
「"ノア"、教えて頂戴。深尾淳一って?」
「承知いたしました。江島委員長。深尾淳一は、蒼明学園大学部文学部国文学科1年。文芸部所属。顔写真と略歴を表示します。」
「ちょっと、やぼったいわね……。」
「……妹が一人、真由菜。高等部1年。美術部所属……」
「美術部員!? 滝之水くんの妹も美術部……。」

初等部から高等部まで、合同で活動している部は多い。
美術部もその一つだ。

「これは……。」

彼女は、報告書を書くために愛機に向かった。
顔には、笑みをたたえながら。

「これは、面白くなりそうね。」
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