「なかなか、いいお店でしょ? ね、竹本先生、天野先生」
駅から少し離れたところにあるビルの2階。
いつもはもっとにぎやかなこの通りも今日は少し勝手が違う。
「くりすますぅぅ、いぶぅ〜。今日くらいね、飲んだって誰もおこんないわよぉぉぉ〜」
「藤井先生、お酒が過ぎると身体に毒ですわよ」
「だぁいじょ〜〜ぶ。さ、グラスが空いてませんよ〜、天野先生も飲んで、飲んでぇ〜」
天野はため息をついた。
女性の付き合いはシビアだ。
今日、ここにこなければさんざんに理由を聞かれた挙句。
「服部先生は、お見合いがうまくいったらしいのよぉ〜」
肴にされる。
「じゃぁ、今年で退職?」
「んにゃ、結婚しても続けるらしいわぁぁ」
教師といえど、人間。
考えることは同じだ。
「先生、天野先生。」
「え? は、はい。」
「今夜は、深刻ですねぇぇぇぇ」
「今までの記録を破るかと思いましたよ」
「記録、ですか?」
藤井が軽く頭を振りながらつぶやいた。
「気付くまでに何回呼べばいいかですよ」
「はぁ……」
だが、天野はよくわかっていないようだ。
「あの……何の話しをなさっていたんですか?」
「どこかにいい男おちてないかな、ってハナシ」
「落ちてたらいいと思いません? カプセルか何かに入って」
「そんなカプセルが落ちてたらぁ〜、私がすぐに拾うわよぉぉ」
「『光源氏計画』ね。」
「何、それぇぇぇ」
「紫の上を自分好みにしたように、自分の好みの男に育てあげるの」
「さっすがぁ〜、国語の先生は、言うことが違うっっっ!!」
会話に加わることもなく、ミネラルウォーターに口をつけると、天野は窓を見つめた。
窓ガラスの端が結露し始めていた。
店内の温度から考えると、外はかなり寒くなっている。
今日の天気図から考えれば――。
「竹本先生、藤井先生、雪が舞ってきましたわ。」
「あら……。」
3人の目が、窓の外を見つめた。
ホワイト・クリスマス。
今宵、皆様に幸せが訪れますように。
そう心から願う天野だった。
ご覧のように、ちょっと天然で、ずれてる高校の地学教諭です。
山奥でダムを作るために沈んだ村々が祀っていた雨を呼ぶ神様が行き場を失い、里へ降りてきた。今まで人間との関わりが薄かったため、あまり「心」や「想い」に関しては、よくわからない、という設定です。
で、結果として、上記のようなキャラクターに。(笑)
以前、誕生日にこのキャラクターで小説を書いていただいて、「きゃぁぁぁぁ!」と喜んでいたのは秘密です。(笑)
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