妖魔 旅行記 '96

目次
8/13 8/14 その1 その2
8/15その1 その2 その3
その4 8/16 以上♪

八月十六日

 起きたら、時計の針が八時を少し過ぎていました。

「寝坊したっ!」

と焦りましたが、まだ、誰も起きていません。麗子には、遅すぎるようですが・・・。

「みなさん、もう起きられましたか?」

とお母様に尋ねられました。そのとき、まだ、横になっていた人が多かったので、

「実は、まだ起きていない人がいるんです。」

と正直に答えました。すると、

「りえちゃん、あなたも一緒に行って、自転車借りて・・・。」

と・・・。
 急いで、寝ていた人を起こすことにしたのは言うまでもありません。

 下諏訪駅からは、自転車を七台連ねて戻ってきました。途中ですれ違った白い車の中では、

「この集団はなんなの!」

と、おばちゃんが目を見開いてわたし達を見ていました(笑)。気づきました?

 自転車でみんな仲良くGM小口の家に戻ってから、お風呂に行きました。

「やっと、目が覚めました。」

と言う声に、顔を見ると、みんなさっぱりした表情。目も覚めたようです。居眠り運転されてはかなわないので、ほっと一安心。

 お風呂から帰ってきて、十一時過ぎという不規則な時間なのに、ご飯を用意してくださる・・・有り難いことです。

 ごはんも食べたところで、「上社へ出発!」と意気揚々と(?)出かけました。

 

 瀬川さんが借りた自転車がパンク!
 探しても、探しても、自転車屋さんはお盆休み。
 結局、下諏訪駅に電話をして指示を待つことにしました。
 が、FAXを使っているようで駅にもつながらない!
 何度も何度も電話してやっとのことでつながりましたが、駅の人は気のない返事。

 もともと、この自転車は茜ちゃんの借りたもの。高さが合わなかったために瀬川さんが自分のと交換したのです。

 瀬川さん、ツイてない!!(笑)

 昨日の大富豪の『幸運の反作用』と思うような落ち込みようも無理はありません。しかし、うつむいた幸運の女神は、またもやほほえんでくれました(笑)。
 下諏訪駅の人が、軽トラックの荷台に、替わりの自転車を載せて来てくれたのです。
 それも、さっきまでのよりもきれい!
 顔中、満面の笑みをたたえて、一気に幸福へと!!

パンクも直ったことですし、気を取り直して上社へと自転車を連ねていきましたが、今度は道に迷ってしまいました。わたし達は、何だか漫画みたいに《お約束》という行動をしている気がするのですが・・・。まあ、これも一興。旅の思い出になりました。

 上社に着くと風斗くんが、

「このごろ、ダイスの目が悪いから。」

と言って、ダイスを清めていました。

(後日談:この後、風斗くんのダイスの目は良くなっています。)

 わたしもダイスを持っていたら、洗い清めていたと思うのですが・・・ちょっと残念。

 みんなで、おみくじを引きました。みんな、とても楽しそうです。結果のあまりよろしくなかった、GM小口とわたしは結びつけることにしました。

「真幸くあらばまた還り見む」

 上社を出たのは、三時過ぎでした。自転車は「半日」で借りたので、五時間ぐらいで返さなくてはいけないのですが・・・。タイムリミットまで、あと三十分。

 というわけで、カーチェイス(?)が始まりました(笑)。

「誰か他の人の後ろに入れば、空気抵抗が少なくなってラク。」
 「みんな、ついてこれる? OK? なら、もっとスピードあげるよ?」
 「大丈夫? 本当に辛くない?」
 「やった! 真樹麗子に勝ったわっっ>」(←榊 由美)
 「とばすぞー!!」

 などなど数々の名言が生まれましたね。そして、その言葉の通りに『地図を』とばしてしまったわたし(笑)。本当にごめんなさい。

 制限時間を十分過ぎて下諏訪駅に戻ってきました。でも、駅のレンタサイクルは時間厳守ではなかったようで(パンクした事もあって大目に見てくれたのかもしれません)、何もおとがめはありませんでした。走ってきたかいがあったというものです。

みなさん、本当におつかれさまでした

 今日、一日でみんな陽に灼けて・・・風斗くん、顔、大丈夫? クロくんの腕、GM小口の足、同じくらい真っ赤になっていましたが大丈夫だったのでしょうか? 瀬川さんは、灼けてよかったと言うべきなのでしょうか?

バスに間に合わないかも・・・と一抹の不安を感じつつ、お世話になったGM小口の家を出て早足でバス停へと歩きました。が、実際には、バスの到着が遅れて、茜ちゃんとわたしが買い出しに行って戻ってきても充分間に合いました。バス停で待っていた人には、「間に合わなかったらどうしよう」と言われていたようですが。

 バスセンター行きのバスが来て、GM小口にしばしのお別れと感謝の言葉も充分に言えないうちに、再び車中の人となりました。
 途中のサービスエリアでは、リンゴを売っていたそうです。
 もう、「秋」。行く夏を惜しむかのように、花火が!

「クロくん、さっきの花火見た?」
 「えっ! 花火があがっていたんですか?」
 「うん。あがってたよ。」
 「四発だよね?」
 「最後の一つは、腰の運動をしながら見ましたよね。」
 「えーっ! 今度あがったら―たぶん、もうそんなことないでしょうけど―起こしてくださいよ。」
 「わかった、絶対に起こしてやる。何としてでも(笑)。」
 この会話の後、三回も花火に遭遇しまして(笑)、クロくんも満足できたようです。起きていたから、瀬川さんに起こされずにすんだし(笑)。
 途中の渋滞情報には二◯qなどとありましたが、《看板に偽りありすぎ》で、バスのスピードは遅いものの止まることはなく、名古屋に着いたのは予定時間より一時間遅れですみました。みんなに心配されていたクロくんも家まで帰れる電車が動いていたので、ほっとしました。
 あっと言う間の二泊三日でした。また「このメンバーで」どこかに行きたいね。

真樹麗子 こと あい

八月十五日 その四

上諏訪駅に近くなるに連れて「一体どこにいたんだ」と思うような、人、。ついに、身動きがとれなくなってしまいました。そこで、《サバイバル・アドベンチャー‐これであなたも冒険者‐》が決行されることになったのです。この《サバイバル・アドベンチャー》は箇条書きにしてまとめることにします。


 サバイバルその一 
   この人混みを抜けて道の反対側にわたること。(上諏訪駅近く)
      →さすがに、ここで失敗するとは誰も思っていないでしょう。

       「ここで失敗するようなヤツに冒険者の資格はなーい!!」(小口GM談)


 サバイバルその二
   ここを通り抜けて表側にでること。(上諏訪駅のコンビニで)
      →「サバイバルその二、いくよ。」と言ってコンビニに入っていくGM。
何かと思えば、またしても通り抜け。


 サバイバルその三
   冒険者たるもの体力が必要!
        →みんなで、歩く歩く。それも、ただ歩くだけじゃなくって、
         話しながら。話しながら歩くのは体力の消耗が早いんだよ。
         話すだけでは足らず、NHKの「みんなの歌」を歌っていた
         人もいました。他人事のように話してはいけませんね。
        “♪HEY! ウルラウルラウルラウルラウルラウルラウルラウルラ〜”
   ラック判定→GM小口がラックに成功しました!!
        焼きトウモロコシ屋さん発見です。その上、買った焼きトウモロコシは最後の一本でした。はい、みなさんご一緒に。

「おめでとー!!」

        (このトウモロコシを茜さんに捧げ持たれていたことをGM小口は知っていただろうか。)
        また、風斗さんもラックに成功してコンビニを発見しました。
        ここで、みんな一休みです。

 ここに「サバイバル・アドベンチャー」は一応の成功を見たようです。

「任務完了。 オペレーション サバイバル・アドベンチャー。」

 歌ったり、お話ししたりするうちにGM小口の家に到着しました。お母様が座布団を敷いて、料理を並べて待っていてくださって・・・感謝感激。夜店で買ってきた食べ物も、エビチリを始めとしたお母様の手料理と一緒に食べることになりました。大きなたこ焼きを食べて・・・。瀬川さん、焼きそばおいしくてほっとしたよね。きちんと一皿食べようとしてくれるので、わたしはとても申し訳なかったです。

 みなさん、

「♪いいえ わたしは蠍座の女〜」

をバックにうちあげられた、花火のVTRを見ながら飲んだカリン酒のお味はどうでしたか? わたしはお酒がのめないたちなので、香りが強くて一口の半分ぐらいしか飲めなかったのですが、飲んでいたみなさんの顔を見ていると満足していたようですね。

 おなかもいっぱいになったところで、二階に上がりました。今回の旅行の目的(?)である「妖魔夜行 番外編」のセッションの開始です。

 ベランダにでている二人。せっかく、瀬川さんとの「二人の世界」の写真を撮ろうとしたのに、瀬川さんが逃げちゃうから・・・。《さわやかGM小口》だけの写真になってしまいました。お・ぐ・ち・くんっ。ネガは、わたしが持っているからね(にこにこ)。

 今回のセッションでは、様々な新事実が明らかになる兆しがありました。たとえば、

  ・舞花を連れていった男とのこれからの関わりは?
  ・もの静かな性格の渚さんによって麗子は薫くんと仲良くなるのか?
  ・流衣ちゃんのおばあちゃんと彩雲さんの恋愛話は?
           (小説をGMが書いてくれるかもしれない) など
があげられるのではないでしょうか。
 そんなセッション中ですが、みんな眠いのでしょう、かなりぐたぐたになっています。たとえば、


  ・「葉舞刃、いきまーす!」(←戦闘中の紫苑寺舞花)
  ・「えっ、今、何て言った?」(←同じく戦闘中のGM)
  ・「妖怪化してないから防護点・・・んっとぉー。何点になるんだっけ?」(←同じく戦闘中の真樹麗子)

などなど。あげればキリがありません。GMは、

 「こんな話になるはずじゃなかった。リプレイなんか絶対やんない。」

と言っていますよ。(『逃げ』という説もありますが定かではありません。)

 この時、クロくんは、瀬川さんに無理矢理に「クロ」を着せられていましたね。その様子にはGMの蝉の声が聞こえてきそうですね。

 みーんみんみんみんみんみーん。

(実際、名古屋に戻ってからも、何回かGMの蝉の声が頭の中で響いていました。)

 エピローグの諏訪湖での花火大会まで無事に終了したのは、昨日より一時間も遅い、朝の四時過ぎのことでした。終わって少したつとバイクの音が聞こえました。新聞が配達される時間・・・。こんなに朝早い時間まで、うるさくて申し訳ないと反省しつつ、朝の八時起床を約束。今回は守ってもらえると信じて眠ることにしましょう。

八月十五日 その参

 花火の後、親切な人に懐中電灯でこちらを照らしていただいたので、片付けるのが少し楽になりました。刺さったままにした釘もありますが。

 片付けた後、夜店を見ながら、駅までみんなで歩いて行きました。何か食べるものを買っていこうということになるのは、『お約束』でしょう。

 「みんな、焼きそば食べる? 食べる人?」

と言った人が焼きそばを買いに行くのは、ごく当たり前のことです。

 「おじさん、大盛りにしてね。」

 店のおじさんがこの声に応えてくれて、本当に大盛り。輪ゴムを二本かけても、まだふたが閉まりません。

 「本当にサービスしてくれたんだ。おじさん『いい人』だー。ありがとうございます。」
 「わぁー。《すごい》大盛り。大サービスしてくれたんだぁー。ありがとう!」
 「ほら、お姉さんは、箸持っていき。」

 と言って、おじさんはわたしに七本の割り箸を渡してくれました。
 しかし、ふたが閉まらないのでパックから焼きそばがでていたし、袋に入れたことは入れましたが、あくまでも入れたのであって(笑)。困ったことになったなと思ったのです。

 そう思った瞬間。

 わたしの目に飛び込んできたのは、瀬川さんの《しまったっっ》という顔。どうしたのかと思って聞いてみると、笑いながら、

「言いくるめに、失敗したぁー。」
「??? へっ?」
「もう一皿、買っちゃった。もういい!! もういい!! 買っちゃえ、買っちゃえっ!!」

 と言って、帽子を片手に店の前でくるくると歩き回っています(笑)。
 せ、せ、せ、瀬川さん? 一体どうしてそんなことにと、聞こうと思ったわたしの前に、二皿目が・・・。

 「さっきのより多いよ。」

 せ、せ、せ、せ、瀬川さん、そ、それはないでしょう? さっきのでもかなりの量なのに、それ以上のをもう一皿なんて・・・。

 「どうして、もう一皿買うことになったの?」
 「分けて入れた方がいいなと思って、《パック》を指して『一つください』って言ったら、こういう事になったんだって。」
 「それって、ただの失敗じゃなくって《ファンブル》って言うんじゃ・・・」
「確かに(笑)。《ファンブル》だ(笑)。」
「あいさん。瀬川さん、一体どうしたんです?」

と舞花さんの声。すぐそばには、不安げな風斗さんの視線もありました。

「瀬川さんが、《ファンブル》したの。」
「??? なんですか、それ?」
「焼きそばを、もう一皿買っちゃったんだってさ。」
「なんでこんな事になったんですか?」

事情を説明すると、

「せ、瀬川さん、かわいそすぎる・・・。それで、それ、誰が食べるんですか?」

と聞く舞花さんの声は、笑いでふるえ、体はのけぞっています。

 しかぁーし。

 目線が「わたしは知らない」と意志表示をすることを、忘れているわけがありません。

 「自分で食べてもらうしかないよねぇ。」
 「あいさん、どうしたんですか?」

 今度はGM小口。同じように事情を説明すると、

 「あーあ(笑)。それは、店の親父の方が、一枚上だったって事じゃないんですか?」
 「だから、《ファンブルで失敗》なんだよー。」
 「なるほど(笑)。」

 わたしは、みんなの共通の疑問を瀬川さんに聞くことにしました。

 「瀬川さん、それ、誰が食べるの?」

 もちろん、わたしの声もふるえています(笑)。

 「そりゃぁ、みんなで・・・。ねぇ(笑)。」
 「いややあー(笑)。わかった。一皿の七分の一ずつは食べるわ。割り当てだから。だけど、もう一皿は自分で食べてよ、自分で買ったんだから。買った人の責任やわー。」
 「えっ、うそっ。・・・。わかった。わかりましたよ。僕が食べますよ。食べればいいんでしょ、『一皿と七分の一』は。だから、後、残りはみんなで食べてね(微笑)。」

 と、しっかり念押し(お願いという噂もある)されてしまいました。



 駅までの道で、聞いてみました。

 「なんか、瀬川さん、いつもと違うよね。一体いつからだと思う?」
 「バスの中で歌っていた時から。」

 何とも明確な答えが、返ってきました。誰から返ってきたかは言えません(笑)。

八月十五日 その弐

 お昼ご飯を食べました。これで、朝・昼・夜に関わらず、食事時に無口だということが証明されました。ご飯を食べた後も、寝不足がたたっているのか、みんな無口のままで元気がありません。

 三時過ぎだったでしょうか、GM小口のお母様と色々なお話をしました。日本の三大奇祭の一つである(らしい)御柱祭についてです。その話の最中、寝ころんでいたGM小口がわたしの方を見た、あの目。わたしは忘れていませんよ。いいえ、忘れることができませんよと言うのが正しいのでしょう。《どうだ》っていうような目。お母様のいらっしゃる手前、反応ができなかったので流しましたが、

 「だから、《御柱》は恐いんだ。」

 の言葉だけは、さすがに聞き捨てなりませんでした。すぐに、ブラックが降りてきましたもの。

 「そうね。」(←これはわたし自身の言葉。)
 「だから、《ブラック》は恐いのよ・・・」

 諏訪湖に出かける時間となり、JRの下諏訪駅へ向かいます。―そうそう、舞花さん。駅前のオブジェに巻いてあった縄は祭りに使われるものらしいですよ。やはり、あれは御柱祭に関連『大あり』のオブジェです。―駅のホームでも御柱を見つけました。麗子は、こんな所で小金を稼いでいるの? と言ったら、GM小口に注意されました・・・。本当に稼いでいるとは思っていませんよ。もし、麗子が本当にこうやって稼いでいたら、わたしはとっても悲しいです。

 混んでいる電車に乗って〈キューッ〉となりながら、上諏訪駅へ。駅前で、ジュースやテープを買い、今朝早くにお父様とGM小口にとっていただいた場所へと向かいます。

 あれ? だあーれ? ビールを買いに行くのは。今日は、おかしくならないでね。

 いろんな夜店を両脇に見ながら、席に到着。雲間からの光がすごくきれいで・・・。こんなにきれいに晴れるなんて・・・。きっと、昨日の『言霊』のおかげですね(笑)。

 ありと戦いつつ、作っていただいたおいなりさんを食べました。おいしくって・・・。またまた、しばらくの間無言で(笑)、食べることに集中していました。でも、「耳」はBGMにしっかりと吸い寄せられていました。

 「・・・御柱祭をイメージした曲、『命燃えて』」

 というナレーション。すかさず、

 「麗子さん、燃えちゃうらしいですよ。」

 とは、茜ちゃんの言葉。その曲がまた、・・・。花火大会に花を添えていました(笑)。

 お弁当を頂いた後、トランプをすることになったので、「ダウト」はやめて(笑)「大富豪」にしました。茜さんが、前夜の大貧民から大富豪へと華麗なるサクセスストーリーを歩みました(拍手)。『幸運の反作用』が色々な人をおそったのですが、まともにくらったり、ものともせずによけきったり、人によってその結果にはかなりの差が出たようです。
 この『作用・反作用』を何度も何度も繰り返しくらっていた人もいましたね。

 花火があがり始めました。そのとたん

 「きたな、『衝撃波』。」
 「どこにいる!! スーパーサイヤ人!!」

 この言葉を誰が叫んだかは言えません(笑)。
 お母様に「音がすごい」とは教えていただいていたのですが・・・。「百聞は一件に如かず」を実際に体験できましたね(笑)。
 花火の合間には、茜さんに講師(天体カメラマンの茜さんにぴったり?)になっていただいて、星空を眺めていました。本当にきれいなきれいな星空で、首が痛くなることもすっかり忘れて見入っていました。国語だけでなく理科の勉強にもなる・・・なんてすばらしい花火だったのでしょう(笑)。

 花火師の競演花火が終わり、第二部の開始です。どこかで聞いたようなイントロが流れて・・・一瞬の沈黙は、爆笑へと変わりました。

 「なぜ、セーラームーン!!」

 “♪ごめんね 素直じゃなくって〜”

 「しかも、歌入り!!」
 「せめてカラオケにしてくれよ。」

 “プログラムbP タイトル、ムーンライトセレナーデ”

 「ムーンライトセレナーデなら、ムーンライトセレナーデを使えよ。グレンミラーの。」

 歌は・・・でしたが、花火がきれいだったので良しとしましょう。このように始まった第二部でも、わたし達は第一部の時と変わらず、花火の合間に「星」空を見上げるという大変贅沢な時間を過ごしていました。

 中盤にさしかかってきた頃にあがった花火からは《私の嫌悪感を誘う 茜さん談》ムカデが降ってきました。

 「いやぁー。いやすぎる・・・。」

 ここまで人にいやがられる花火をつくった人は「えらい」とわたしは思います。

 さて、いよいよ花火も終盤。水上花火の時間になりました。

 「どこでやるんだろう?」

 と思っていると、目の前をなにかがフルスピードで走っていきました。

 「なにか逃げていってるぞ。あれは、警備艇かなぁ。」

 と言っているうちに、花火が目の前で!!
 必死の努力もむなしく、最初の花火があがった時、警備艇はまだ火の粉がかかる位置にいたのです。

 「早く逃げるんだ。がんばれ、警備艇!!」

 というGM小口の声に代表されるように、みんな「がんばれ、警備艇!!」コールを送って警備艇を応援していました。

 「わたし達、何か違うものを見ているような気がする・・・。」

 という舞花さんの声に頷きながらも、目は警備艇を・・・(笑)。警備艇の無事を見届けた後は、水上花火や水上花火と打ち上げ花火との共演に、目を奪われて見つめ続けていました。

 フィナーレは、ナイアガラの滝。これで「色々あった」花火大会も終了です。あっという間でした・・・。

八月十五日 その壱

 起きたら、麗子さんに

 「雨もあがったというのに、まだ寝ていましたの? いまごろおはようなんて・・・。もう早くありませんわ。」

 とあきれられました。朝早く秋宮に参拝するのが麗子さんの日課だからって、わたしに押しつけないでよね。わたしは麗子さんじゃないんですからっ。

 「これでもみんなより早く起きてるんだよ。」

と言ってみたら、

 「ネットワークマスターたる者の心得でしょっ。」

と諭されました。だ、か、らぁー。わたしは麗子さんじゃないんだってばっ。

 午前八時頃。

 「風斗くん、舞花ちゃん、茜ちゃん、時間ですよ・・・。」

 こちらの部屋には、発言者の意に反してこんな声が聞こえました・・・。


 朝ごはんです。みなさん、朝はあまり食べないようですね。朝ごはんをきちんと食べないと力がでませんわよ。これから下社秋宮に行くわけですし、わたくしの家である大社堂も探すのでしょう? 道に迷うことがわかりきっているのですから、ごはんはしっかり食べておいてくださいね。

 下社秋宮に向かいます。秋宮までの道を新しい商品を仕入れられないかしらと考えながら歩いておりますと、舞花ちゃんが笑いながら、

 「麗子さん、自分の身を削ってまで作っているんですか?」

とわたくしに聞いてくるのです。風斗くんも

 「本当だ。」

と笑っています。

 「何を」かと思ったわたくしは、二人の目線の先に『御柱おやき』なるものを見つけましたの。でも、わたくし、火には弱いですし、作り方も存じませんし、あらあら困ったわねぇ〜・・・と思っておりましたら、いつの間に現れたのでしょうか野牟田くんが、

 「いいじゃないですか、《本物の》とか《元祖》御柱おやきって名付けて売り出せば。弟子入りして作り方を学んで、大社堂の新商品として売り出しましょうよ。」

とか・・・。もう、みんな他人事だと思って言いたいこと言うんですから。それが、今のメンバーのいい所でもあるんですけれど。

 秋宮に着きますと、どこからかとても綺麗な音色が・・・。

《血が騒ぐぅぅぅぅぅ〜》

 体は勝手に動いてしまいますし、そわそわして、何だか落ち着きません。
 音のする方を見やりますと、わたくし以外の分身が踊っていたのです。毎日、それも二十分に一回、御柱が踊っているのですよ。わたくしの「お祭り好き」の血が騒ぐのも無理ありませんわね。
 さすがは奉全様ですわ、わたくし以外にも分身を作っていらっしゃったなんて・・・。
 あっ、そうそう、言うのを忘れておりましたが、

 「踊っていたのは麗子さん自身じゃなかったんですか?」とか

 「ほぼ毎日参拝しているのに、今まで気づいていなかったんですか?」

 などという《鋭い》つっこみは受け付けませんのであしからずご了承くださいませ。

 秋宮の裏手のわたくしの本体のある場所にみなさんをお連れしようかとも考えておりましたが、人が多いので今朝は無理ですね。

 お守りや絵はがき、色々なものを売っていましたが、みなさんに大人気だったのは『お箸』でした。わたくしの身が削られているなんてと嘆いていますと、健御名方神と八坂刀売神が、本体はもっともっと古い木だから大丈夫と慰めてくれました。この際ですから、少しでも皆様に幸がありますようにと、祈ることにします。

 舞殿の前で、今回の旅行の記念に集合写真を撮影しました。

「入る? どうする?」
「どっちでもいいよ。」
「ここまで来たんだから、行きたくない人っ! 誰もいないな! よし、行こうっ。」

というわけで、宝物館に入り、風斗くんの剣らしきものや、長い長い太刀を見ることができました。

宝物殿の後は、みんなで手押しポンプから(?)お水を飲みました。みんなの顔が気持ちよさそうです。お味はいかがでした?

 その後は、大社通りを下って奏鳴館に行くことになりました。きれいな音のオルゴールたち・・・。生演奏を聴いただけでは物足りなくなって(?)実際に自分でひいていた人もいましたね。保母さんみたいだなあと思って見ていました。

 奏鳴館の一階は、いろいろなオルゴールを聴くことができるようになっていました。みんなが聴いていると、全部聴き終わって暇を持て余した《自称「茜さんの一番弟子」》の報道部員が、いつの間にかわたしのカメラを持って駆けめぐるという大変なことが・・・。瀬川さんやわたしは聴き終わっていたので被害らしい被害は受けずにすみましたが、被害にあった方々、高校の新聞に載せられたり、ばらまかれたり、話を聞くための脅しのネタとして使われたりなど、悪用されることのないように注意してくださいね。

《教訓:由美ちゃんにはカメラを渡すな!》

八月十四日 その弐

 名古屋を出て五時間ぐらいたった頃、GM小口の家に着きました。着いた早々から、ご家族に「ヘン!」と言われ続けていたGM小口は、髪を切りに行きました。
 戻ってきたら、《さっぱりさわやかさん》になっていて、「ヘン!」と言われ続けていたのも無理はないと納得しました。(今まで、全然ヘンだとか思っていなかったので・・・。)
 ところで、GM小口。頼むから、たまには実家に電話してね。クロくんも、瀬川さんも困っていたんだよ。ビデオデッキを買えるのなら、扇風機を買うか、食費に回しなさいっっっっっっ。

 GM小口が戻ってきてから、みんなでお風呂に行きました。洗面器やシャンプーを始めとして、バスタオルまで持たせていただいて・・・本当に有り難い限りです。ちなみにわたしは、うたせ湯で肩こりを(笑)。さすがに、八百年以上も生きていると体のあちこちが悪くなっていけませんわね。

 お風呂から戻ってきて階下に降りていくと、すでにお夕飯が用意されていました。目が輝いている瀬川さんを筆頭に、全員感動! お料理はおいしいですし、もう、何も言うことができませんでした。

 えっ?
食べるときはいつも静かだって?
あのときはいつもの静かさとは違っていました(きっぱり)。

 お夕飯を頂いた後、二階でトランプを始めました。ババ抜きや、ブラック・ジャック、大富豪などなど。ねぇ、茜さん。わたし達、いつも決まったように負けていたね?

  「そろそろ本番行こうか」の声とともに、「ルナル」のセッションが始まりました。
 しばらくすると、

「みんな、隠して!!」

といつもより小さめのGM小口の声が。みんな、キャラシーや、ダイスを思い思いの所へ隠して、まるで修学旅行の夜のよう。茜さんは、マスタースクリーンまでも自分の後ろに(笑)。一度目は何事もなく、戦闘態勢解除となったのですが、二度目は・・・・

「みなさんお茶か何かいりませんか?」

気づいた人は気づいていたでしょう。わたしの声がすこーし裏返っていたことに(笑)。
・・・後で、ご両親にばれて、GM小口は怒られていないでしょうか? それだけが心配です。

「大丈夫だった。何も言われてはいない。」(GM小口談)

「雨・・・。明日も降るかなぁ・・・。」
「だめだめ、そんなこと言っちゃ。『言霊』って知ってるでしょ? 明日は晴れるの。雨は、あがるの(笑)。」
と、晴天を願いつつ、セッションは続いていきます。

 とりあえず、無事(?)に今日のセッションは終了しました。といっても、もう、日付も変わって朝の三時過ぎですけど。明日も朝早いというのにいいのかなぁ。
八月十四日 その壱

 話しているうちにバスが来て、いよいよ、諏訪に向かって出発です。何故かバスの座席は誰か一人が離れてしまうようになっていました。でも、キャンセルしたか何かでその席には人が来なかったので座席が二つ使えるというラッキーな状態が、瀬川さんに転がり込んできました。(空いている座席には、お土産を置いてもらったので、実際には広くなかったと思いますが・・・。)
 この少し後に起きた「あのできごと」は、この時の『幸運の反作用』なのでしょうか?


 名古屋を出発して、二時間が過ぎました。起きたら周りがデビルマンの話で盛り上がっていたので、茜さんは少し面食らったようですが、

 「デビルイヤーは地獄耳(笑)

などとすぐに会話についていけるあたり、さすがです(笑)。そんなデビルマンの話も一段落して、バスに乗っていることにみんな飽きてきたようです。
 車内には、静けさが戻るかのように思えました。
 が、その時。
 どこからか不思議な歌声がするのです。頭の上の方から出ているとでも形容すべきなのでしょうか。わたしの語彙力では表すことのできない妙な声がしたのです。わたしだけが聞いたのかと思いましたが、通路を挟んで向こう側の舞花さんがわたしの方を見ています。これは、幻聴や空耳ではないようです。
「せ、瀬川さん!?」
「なになに?」
 みんなの目が瀬川さんを見つめています。
 何があったのだろうと瀬川さんはイヤホンをはずしました。
「す、すみません。今、歌っていらっしゃいましたか?」
「うん。歌ってた。」
「・・・(←みんなの声のない笑い。)」
「歌っていましたよ。」
「・・・(笑)」
「えっ、どうかした?」
「いえ、何でもないです。(←みんなの笑い。)」
「だって・・・(みんなの笑いでこの先は聞き取れません)」
「そんなに変な声で歌ってた?」
「・・・(ただただ、うなずく。)」
 このときから《瀬川さん壊れている説》が出てきました。でも、まだまだまだまだ序の口だったんです(笑)。いいイメージが崩れたという意味ではありませんよ。わわ。本当です。すごく楽しい人だと思います。わわわ。いい人ですよぉー。

あぁっ! 人生最大の汚点だ・・・。」(瀬川さん談)

全然、汚点なんかじゃないですよ。あれは、そんな。」(風斗さん談)

八月十三日

 台風が近づいている。明日の夕方には諏訪を直撃するらしい。そんな天気であっても、妖魔旅行は開始される。明日から三日間、果たしてわたしたちは無事に目的を遂げ、名古屋に帰って来ることができるのだろうか。


 なぁーんてね。ま、天気は自分たちの力ではどうしようもないことだから、深刻に考えないことにしましょう。


 何だか、いろいろと楽しいことが起こりそうな予感がするので、日記をつけることにしました。ただ一つ気になるのは、わたしが麗子と化しそうなことです。彼女自身は、わたし達が見つけないように、大社堂共々人払いをかけて待っていると思うんですけど。


  明日は晴れるといいなぁ、いえ、ぜいたくは言いません。雨が降らなければ・・・。


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