文責:高等部生徒会報道委員長 紀家霞
Time.5 新たな<世界>の彼方には
(魔術師の館1階・電脳の間 17:17:01)
 ぎぃ〜(ドアを開けて部屋に入ってくる紀家)。
紀家ここが「電脳の間」か。......すっごいなあ。何となく往年の特撮ものの悪の組織の秘密基地にある巨大コンピュータみたいな感じが、アンティークな雰囲気を十分に醸し出してる......。"ノア"に勝るとも劣らないな。 ――あら、意外とセンスがいいのね。 紀家ふぇっ? 合成音声? ピンポーン♪
正解者には特典として、あたしとチャット――じゃなくて、会話できる権利をプレゼントよ。
紀家じゃ、そーゆーことで(脱兎)。 こらこら、待ちなさいってば。影浦さんとここで会う約束してるんでしょ? 紀家な、何でそのことを!? ふっふっふ、あたしに分からない情報なんて存在しないのよ。魔術師の元に集う、22の魔宝の1つ――この<世界>には、ね。 紀家ああ、君が宗祇くんお気にいりの魔宝か。僕は......。 世界蒼明学園高等部生徒会報道委員長、紀家霞――幽体離脱の能力を持ち、学園内の情報に関しては知らないことがないと言われる人物。性格は基本的に淡泊だが、自分が興味をもった事象についてはとことんまで食らいつく――というところかしら。 紀家......さ、さすが......。 世界ま、あたしにかかればこんなものね。 紀家あのぅ〜、姿を見せてくれない? でないと、話しにくくて仕方ないよ。 世界あたしの姿って......君の目の前にある、悪の組織のコンピュータなんだけど? 紀家えっ!? そ、そうなの? 世界そう。ま、いいわ。今、出すから
(と言った瞬間、超美人出現)。
紀家わわっ! な、何も急に僕の隣に出てこなくても......。 世界そんなことより......取材はしないの?(急接近) 紀家(赤面)は? ひゃ? しゅ、取材? 世界魔宝へのインタビュー。言ったでしょ、あたしに分からない情報なんてないって。
(同室 17:27:26)
世界さて、確かオープニングは...私の『原型』について話すのよね? 紀家う、うん(おかしいなぁ......<世界>の姿って、中学生くらいの女の子って聞いてたけど、すごい美人のおねーさんじゃないか) 世界どうしたの? 顔が真っ赤よぉ? 紀家な、何でもないですっ! えーっと、<世界>さんの『原型』は――。 世界あ〜ん、だめだめ。<世界>さんじゃなくて、千歳。せっかく宗祇くんが名前つけてくれたんだから、使わないとね。 紀家は、はあ...じゃあ、千歳さんの『原型』について聞かせて下さい。 千歳あたしの『原型』は、ハッカーなの。自慢じゃないけど、結構名うてだったのよ。 紀家そんな人がどうして魔術師と? 千歳あたし、魔術師と勝負したの。負けた方が勝った方に従うって。もちろん、喧嘩じゃなくて、某企業のデータを奪うっていう形でだけど。 紀家そ、それも十分物騒だと思う......。 千歳まあね。で、結局、あたしは勝負に負けたの。データは奪ったけど。 紀家え? データを奪った方が勝ちなんじゃ......。 千歳その辺はトップ・シークレット。ていうか、あたしの口から話すの、悔しいから。魔術師か影浦さんか<皇帝>に聞けばいいわ。 紀家は、はあ......。 千歳まっ、そーゆーことで、あたしは魔術師に協力することになったわけ。
(同室 17:36:40)
千歳さあさあ、お次は何かしら? 紀家あ、はい......千歳さんの能力を教えて欲しいんですが。 千歳......知りたい?(急接近) 紀家いや、あの、だからその............し、知りたい、です。 千歳OK。じゃ、百聞は一見にしかず。おねーさんと一緒に電脳空間へレッツ・ゴー! 紀家え、ええっ!? ええええええっっっ!?
(電脳空間内 17:39:12)
紀家......ここが電脳空間? 千歳そ♪ まあ、空間内の映像はあたしが創っているから......剣と魔法のファンタジーでもSFでも現代伝奇ものでも、えにしんぐ・おっけーよ。 紀家はあ......ちなみに、今ここにいる僕は精神体なわけ? 千歳んなわけないでしょ。君、実は機械に弱いんじゃないでしょーね? 紀家そ、そういうことは自覚したことないけど......。 千歳今の君は、あたしが構築したデータに意識をリンクさせてるだけ。本気で接続すれば、もっと処理速度も上がるし、君自身の行動の自由もあるんだけど、今日はそこまでする必要はないし、ね。 紀家やっぱり、電脳世界にダイブしてた方が有効なの? 千歳段違い。思考そのものが、即行動に結びつくんだから。もっとも、あたしはシステムそのものだからカンケーないけど。ただね、強すぎるのも困りものよ。今のあたしの相手になるのって、"ノア"か<裏生徒会>くらいなものだし。 紀家そういえば、一番始めに僕らと接触してきたのは、<世界>なんだよなあ。あれが全ての始まりだったわけだし......。 千歳あっ、それで思い出した! "ノア"って、いい男よねー。あれ以来何度かアクセスしたら、結局仲良くなっちゃってさ。 紀家な、仲良し!? 千歳そう! 彼、まだ若いけど堅実そうでいいわぁ。 紀家......(若い......まあ、確かにそうだよな。堅実そう......そりゃ、無理無茶無策で無鉄砲なコンピュータなんてイヤだぞ)。 千歳現実世界の宗祇くんを選ぶか、仮想世界での淡い恋に生きるか......悩むわねえ。
(同空間内 17:48:12)
紀家あ、そういえば......魔宝にはもう1つ能力があるんですよね? 千歳うん。あたしの場合、<機械創造>がそれに当たるのかしら。大抵のものなら、簡単に創れるわ。 紀家ぃ、一瞬で創っちゃうんですか? 千歳(苦笑)さすがに一瞬ではないけど。唯一の欠点は、現時点での文明レベルを超える代物を創れないこと。つまり、魔宝は無理ってことね。 紀家それでも、凄いなあ......。
 ピピピッ(突然の警告音)。
影浦......<世界>、活動限界が近づいていますぞ。紀家様を連れ、速やかに電脳空間から脱出してください。 千歳あらら、もうそんな時間? もうっ、仕方ないなあ。 紀家か、活動限界って......そんなのあったんですか!? 千歳あれ、言ってなかったっけ? 紀家言ってなーいっっっ!!! 千歳んじゃ、出ましょっか。
(魔術師の館1階・電脳の間 17:54:22)
紀家(はあ、やれやれ......)
えっと、次は千歳さんの性格、長所や短所を教えてください。 
千歳あたしの? うーん、改まって聞かれると返答に困るってゆーか......影浦さん、分析おねがーい。 影浦承知しました。<世界>は――。 千歳ち・と・せ・♪ 影浦......千歳様は大変実力のある方です。しかし、ややその実力を過信し、無茶をしてしまうこともありますな。坊ちゃまが<奇跡>を行う際の情報収集という、大きな役割があるだけに自重して欲しいところなのですが。 千歳む〜(不機嫌)。 影浦...とはいえ、常に前向きの姿勢はその欠点を補って余りあるでしょう。 千歳ふっふっふ(上機嫌)。 紀家うーん、確かに。いつでも前向きっていう点は、うちの生徒会にも似た人がいるから何となく分かるなー。 影浦江島様ですね? 千歳あたしの方が上よ! ぜーったいに、上! 紀家いや、誰も勝ち負けは言ってないんだけど......。
(同室 18:01:03)
千歳いやー、これでおしまいね。 紀家突然の取材に協力してもらって、本当にありがとうございます。 千歳ふふふ、あたし、可愛い子が大好きなの(再度、急接近)。 紀家ひえっ!? あ、やや、あの......うわわわわっ!? ごんっっ(後退しすぎて、コンピュータに激突) 紀家きゅう............(気絶)。 千歳あらら、ちょっと色気で攻めすぎたかな?(美女から美少女へ)  影浦これはココアよりお冷やを用意した方が良さそうですな。 千歳ううむ、ここまで奥手だとは......あたしのライブラリにも修正が必要ね。
今日の一品 ココア......?

◎魔宝ファイル:5 <世界/ワールド>

【形態】
どこか漫画チックな巨大コンピュータ。立体映像を使用することもある。
【名前】
千歳(ちとせ)
/中学生くらいの明るい少女,ただし立体映像のため自在に変化
【原型】
司機智渡世(しき・ちとせ)
/十代のハッカー,通称『ファントム』

【能力】
[電脳世界:電脳空間の創造]
脳空間における優位性/他者の電脳侵入補助
[機械創造:現在の文明レベルを超えない機械の製作]

【性格】
常に前向き。悔しさをばねにするタイプ。やや自信家であるため慎重さに欠ける。精神的に強さを感じさせる者が好き。自己に脆さを感じているためらしい。
魔術師の良き友人という立場を取りつつ、彼への憧れは捨てていない。

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