文責:高等部生徒会報道委員長 紀家霞
Time.3 <月>の輝ける夜に
(魔術師の館3階・夢見の部屋 20:38:02)
影浦――眠れないのですか、月子さま? 月子お爺ちゃん...。 影浦...今度の<奇跡>危険なものではありませんよ。ご安心ください。 月子うん...。 紀家そっかあ、また魔術師が動きだすんだね。 月子うん......って、何であんたがここに、こんな時間にいるの!? 紀家(頬を掻きつつ)え、何でって...今日は生徒会の仕事で遅くなっちゃったから。江島さんって締切りに厳しいから、参っちゃうよ(笑)。 月子(笑)じゃなーいっ! レディの部屋に無断で入らないで! 紀家影浦さんもいるから、いいじゃない。 影浦月子さまも難しい年頃ですから。 月子うううう〜〜〜〜〜。
(魔術師の館1階・食堂 20:50:19)
影浦今日は良い葉を切らしているので...これをどうぞ。 紀家あ、ホットミルク。僕、好きなんだ。身体も心も落ち着く感じで。 影浦それは奇遇ですな。月子さまもこれがお好きなのですよ。 月子お爺ちゃん! 影浦これは、失礼しました。 紀家さて、今日は月子ちゃんの取材に来たんだけど。 月子...ヤだって言ったら? 紀家その時は連載中止になるね。残念ながら。 月子 紀家あ...気にしなくていいよ。こっちの話だから。これ以上言うと、たぶん――(以下検閲により削除)。 影浦おや? 紀家――こうなっちゃうんだ。 月子よく分かんないけど、ま、いいよ。月子が子供ってことに感謝してよね。 紀家ははは...(汗)。
(同室 20:59:59)
月子魔術師に導かれし22の魔宝が1つ、<月> ――いちいち説明しなくても、もう分かってると思うけど。 紀家まあね。月子ちゃんは...影浦さんとは逆に名字がないんだね。 月子月子は月子。それで充分じゃない。 紀家それにしても、魔術師ももっと可愛い名前を...(はっ)。 月子(じろり)何か言った? 紀家あ、別に。ところで、月子ちゃんの『原型』は...やっぱり同じくらいの年齢だったの? <戦車>の取材の時に言ってた研究を、その年でやっていたわけ? 月子月子の『原型』は、もうちょっと大人だった。あんたと変わらないはずだもん。 影浦月子さま、言葉遣いがよろしくありませんな。紀家さまに失礼です。 月子だってぇ〜。 紀家僕は別に気にしないよ。じゃあ、高校生なのに何かの研究をするくらい頭が良かったのかあ...すごいね。 月子(ちょっと赤くなって)ベ、別に大したことしてないもん。それに頭なら魔術師や〈愚者〉の方が良かったし。 影浦月子さまの『原型』は有名な神社の一人娘でして、優れた霊能力を持っておりました。おそらく霊的素質なら世界屈指の方でしたな。 紀家霊能力者...本当に色々な人を集めたんだ、魔術師は。 影浦当時の――いえ、現在でもかなり奇抜なシンクタンクと言えるでしょう。
注釈.シンクタンク(think−tank)とは?
頭脳集団。種々の領域の専門家を集め、基礎・応用研究をはじめ、コンサルティングサービスにも応じる企業組織。
もっとも、影浦さんは「プロフェッショナルたちの集まり」という意味合いで使っている。
でないと<戦車>が当てはまらないし(笑)。
影浦月子さまの『原型』は坊ちゃまと同年代ということもあって、かなり親しい仲だったようですな。 月子...(真っ赤)。 紀家なるほど、どうりで魔術師と仲がいいわけだ。...ん? でも、『原型』より何で幼くしちゃったんだろ? まさか魔術師って――。 月子この姿は月子の『原型』が自分から望んだの! おかしな想像しないでよ! 影浦...まあ、御自分より年若い方の面倒を見る事がお好きなようですが。 紀家ほほう(江島さんをよく手助けするのも、そういうことかな?) 月子もうっ、お爺ちゃんまでぇ。
 (同室 21:27:23)
紀家さて、月子ちゃんの能力と言えば――僕と同じ幽体離脱だね。 月子いやーっ、同じって言わないでーっ! 紀家...(そこまで嫌い?) 影浦紀家さま。実は月子さまの能力は幽体離脱ではなく、「精神世界侵入」と呼ぶべきものなのですよ。 紀家どう違うの? 影浦幽体離脱は肉体から幽体を一時的に切り離すものですが...月子さまは肉体ごと精神世界へ入り込むことができます。これにより霊的エネルギーの変換効率を更に高め、幽体の顕在化を強めることが可能になったわけです。なおかつ...(延々と続く理論)。 紀家あ...その...月子ちゃんは、影浦さんの言うこと分かる...よね? 月子(どきっ)わ、分かるに決まってるじゃない! 紀家(知らずに使ってるんだ...)
まあ、月子ちゃんの能力は“花散里”の事件の時にだいたい教えてもらったけど...やっぱり情報収集を目的とした魔宝なんだ?
月子うん。精神世界でなら、月子は誰にも負けない自信があるよ。心を読んだり、記憶を操作したり、ちょっと乗り移ったり...<奇跡>を求める声も月子が聞くの。 影浦しかし肉体的に弱い面があるので<塔>から出ることはあまりありませんな。 紀家残念だなあ、遊園地にでも誘いたかったのに。 月子ダーメ。月子のデートの相手は魔術師だけだもん。 紀家(魔術師が遊園地へ? ...お、おもしろすぎる)
他にはどんな能力があるの?
月子月子の2つ目の能力は、「神降ろし」だよ。 紀家か、神降ろしって...本当に!? 月子さあ? まだ使ったことないから、分かんないの。 影浦この場合の「神」とは霊的存在のことです。ただ、月子さまにかかる負担も大きいため、今のところ使用は禁止されています。 紀家<戦車>の時もそうだったけど、魔宝には封印される能力が多いね。危険だって分かっていたなら、最初からその能力を持たせなければいいのに。 影浦...魔宝の根本的な部分を創り上げたのは、坊ちゃまではありませんから。能力の調整はともかく、能力そのものの変更はかなり難しいでしょうな。
 (同室 21:50:39)
月子最後は性格とか長所、短所だよね、お爺ちゃん? 紀家ひどいなあ、僕に聞いてもいいのに。 月子絶対、イヤ。 紀家影浦さ〜ん(嘘泣き)。 影浦月子さま、あまりお苛めになってはいけませんよ。 月子はぁ〜い。じゃあ、お爺ちゃん。お爺ちゃんから見た月子って、どんな子? 影浦そうですな...少々意地っ張りな面もありますが――。 月子(遮って)月子、意地っ張りじゃないもん! 紀家まあまあ、落ち着いて。 影浦心根は優しいと思います。仕事が終わって疲れている私の肩を叩いて下さったり、食事の準備や後片付けを手伝っていたり...気がつきにくいところで、その優しさを感じますよ。 紀家へえ〜(感心)。 月子そんな風に誉めないでよ...月子、そんなにいい子じゃないのに。 紀家照れてる、照れてる。 月子うううう〜〜〜〜〜。 影浦あとはもう少し礼儀正しくなさると良いですな。 月子ええ〜っ!?(不満そう) 影浦その方が坊ちゃまもお喜びになると思いますが。 月子(一転して)月子、頑張る! 紀家ははは...(実に分かりやすい性格だよなー)。
 (魔術師の館3階・夢見の部屋 22:38:02)
影浦...月が綺麗ですな。 月子うん。――ねえ、お爺ちゃん。 影浦何ですか? 月子...あいつ、どうして来たの?  生徒会がどうとかって言ってたけど、あれ、嘘でしょ? 最初から月子を励ましたいって思ってた...なんで分かったのかな? 影浦(微笑み)さあ、私には分かりかねます。ですが...。 月子ですが? 影浦想いは伝わるものですよ...特に、今日のような美しい月夜には。
今日の一品 ホットミルク

◎魔宝ファイル:3 <月/ムーン>

【形態】
小学生くらいの少女(10歳くらい)。可愛らしいドレスを着ている
【名前】
月子(つきこ)/
いわゆる白子(アルピノ)。髪は銀色に近く、瞳は赤い
【原型】
神無月美子(かんなづき・みこ)/
高校生・某神社の一人娘で巫女も務める

【能力】
[精神世界侵入:精神世界での優位性]
思考や記憶の感知、操作/他者への憑依/精神力そのものを使った攻撃
[神降ろし :霊的存在による攻撃]
霊的存在による防御

【性格】
我が侭で意地っ張り。
なかなか素直になれないが、本当は優しい。
<魔術師>のことが好きで、彼の命令なら死すら厭わない。
<奇跡>について不満はないが、魔術師への負担を思い悩んでいる。

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