文責:高等部生徒会報道委員長 紀家霞
Time.1 <隠者>は語る
(魔術師の館1階・執事室 16:40:23)
紀家やっほー、影浦さん。 影浦おや、紀家さま。今日も取材ですか? 紀家まあね。で、魔術師はいる?
 今日こそ正体を教えてもらいたいんだ。
影浦(苦笑) 坊ちゃまは仕事中です。しばらく部屋から出てこないと思いますが……ところで、いかがですか? 月子さまと一緒に、お茶の時間でも。 紀家あ、やったね。……でも、月子ちゃんは僕のことを嫌ってるし……大丈夫かな? 影浦月子さまは紀家さまを気に入っておられるのですよ。 紀家……ははは。 影浦では、少し待っていてください。
(同室 16:45:09)
月子もうっ、どうせなら魔術師とお茶したいのにー! 紀家僕がいるじゃない。 月子あんたなんか問題外! 魔術師に比べたら月とスッポン、猫に小判なんだから! 紀家……それ、ちょっと意味が違う……。 月子(赤面)うるさーいっ!! 影浦月子さま。ソファーの上に立つなどという不作法、坊ちゃまが見たら怒りますよ。 月子うう〜。 紀家……(月子ちゃんって、姉さんに似てるなあ)。
(同室 16:46:36)
紀家(紅茶を飲んで)……あ、そう言えば影浦さんや月子ちゃんたち魔宝って、どういう存在なの? 未だによく分からないんだけど。 月子(ジト目)乙女の秘密を探るなんて、サイテー。 紀家……あのね。 影浦そうですな……ちょうどいい機会ですから、お話しましょうか。 月子お爺ちゃん!? 影浦大丈夫ですよ。まあ、魔宝そのものの説明は少々長くなってしまいますから、まずは1つ1つの魔宝について解説していきましょう。 紀家やった! これはスクープだ! 月子……ホントにいいの〜? こんな奴に教えちゃってぇ〜。 紀家こんな奴はないんじゃない?……それで、今回は誰のことを教えてくれるわけ? 月子月子のことは教えないでよね(ベーッだ)。 影浦分かっております。今日は私のことをお教えしましょう。 紀家魔術師第一の側近から、か。これは本当にスクープになりそうだ。 月子一番近くにいるのは、あたしだもん! 紀家へいへい。
(同室 17:04:29)
影浦私は22の魔宝が1つ、<隠者>。影浦というのは坊ちゃまからいただいた仮の名です。下の名は必要ないのでありません。 紀家前から疑問だったんだけど、影浦さんだけは魔術師のことを「坊ちゃま」って呼ぶよね。どうして? 影浦それは私の『原型』に由来しております。坊ちゃまには「<魔術師>と呼べ」と再三言われているのですが……長年の癖は直らぬようです。 紀家『原型』? 前に言っていた魔宝の人格のベースとなる人間のこと? 月子そういうことには耳がいいのね(精一杯の皮肉らしい)。 紀家僕は報道委員長だから(余裕)。 影浦まあまあ。私の『原型』は坊ちゃまの家に仕えておりました。坊ちゃまが幼い頃はお世話もしましたし、成人されてからは研究のお手伝いもしました。私も――いえ、私の『原型』も一通りの科学知識を持っている人間でしたので。 紀家(黙ってメモ) 月子……やってることは今と変わってないのね。 影浦ええ。ですが、だからこそ私は坊ちゃまに全てを任されているのですよ。 紀家へえ(完璧なプロ意識だね)。 月子まあ、<魔術師>みたいないい男がエプロンつけて料理したり、洗濯してたりするのはいやだもんね。お爺ちゃんならいいけど。 紀家ぷぷっ(想像したらしい)。 月子……<魔術師>を笑ったら許さないわよ! 紀家ごめんごめん。で、僕ならどう? 月子働きたいなら働けば。 紀家冷たいなあ。
(同室 17:30:46)
影浦さて、次は私のもつ能力についてお話しましょう。 紀家えーっと、影浦さんはマイクロマシンの集合体なんだよね? 影浦はい。影浦という姿も、坊ちゃまの補佐役として最も動きやすい形を取っているに過ぎません。<隠者>第1の能力はマイクロマシンであることを利用した隠密行動。あらゆる場所に侵入でき、姿を変えれば変装以上の効果を挙げられます。そして、マシンを周囲に散らすことで広範囲の情報収集も可能なのですよ。 紀家第1ということは他にもあるんだね。 影浦もちろんでございます。第2の能力は<影使い>。隠密行動の成功性をさらに高め、攻撃的な力も弱いながら持っております。 月子お爺ちゃんが戦うのなんて、見たことないよ。 影浦実際、戦っておりませんからな。
 ずるっ(身体を傾ける紀家と月子)
月子お爺ちゃんってば〜。 紀家い、意外とお茶目な人だ。 影浦はっはっは、坊ちゃまにジョークを教えたのは私ですからね。 紀家……なるほど(センスないわけだ)。 月子あんた、<魔術師>にジョークのセンスがないって思ったでしょ? あとで言い付けちゃうから。 紀家それは困るよ。<魔術師>は江島さんよりは多少マシだけど、毒舌家なんだから。 月子それも言っておこっと。 影浦月子さまにも困ったものですな。……まあ、それはさておくにしても、私が戦うことはないでしょう。坊ちゃまや他の魔宝が十分に強いですから。 紀家……月子ちゃんも? 月子あんたよりは強いもーん。 紀家はいはい、降参します(両手を上げる)。
(同室 17:40:11)
影浦さて、他に話すことといえば……。 紀家影浦さんの性格、かな。長所や短所とか。 影浦ほう、変わったことを聞きますな。私どもは魔宝――人ではないのですよ。 月子……(黙って紀家を見る)。 紀家いいんじゃない? 魔宝だろうと何だろうと、影浦さんたちは自分で考え、行動してるんだから。僕は好きだよ――ねえ、月子ちゃん。 月子なんで、あたしに、聞くのよ! 紀家からかうと面白いから。 月子……………………(じろっと睨む) 影浦紀家さまも素直ではありませんな……。さあ、月子さま。あまり興奮なさると身体に障りますよ。 月子ううう〜、いつか<魔術師>に苛めてもらうんだから〜。 紀家んで、影浦さんの性格だけど。 影浦そうですな……とにかく、常に冷静さだけは失わないように行動しております。そして何より、坊ちゃまの意志を最優先にしております。魔宝であるがゆえに、自己防衛意識に薄いのかもしれませんが。 紀家それだけ<魔術師>が大切なんだね。 影浦ええ。逆に短所は...これは自分では正確に判断できませんな。月子さま、私の短所は何だと思われます? 月子礼儀作法に厳しいところ! あと、「勉強しなさい」ってうるさいところ! 紀家言う通りにすれば<魔術師>にふさわしいお嫁さんになれるよ、きっと。 月子ホント!? 影浦大丈夫、月子さまなら必ずなれますよ。
(同室 17:58:06)
紀家……まあ、今日はここまでかな。 影浦お役に立てましたか、紀家さま? 紀家もちろん。今僕らに足りないのは、とにかく情報だからね。 月子自分で調べればいーのよ。 紀家月子ちゃん。そういう風だと、いつか扇子持ってサングラスかけて周りの人たちを圧倒的な迫力で服従させるような人になっちゃうよ。 月子……なんのこと、それ? 紀家僕と月子ちゃんだけの秘密、さ。 影浦その秘密も坊ちゃまにお届けしておきましょう(にっこり)。 紀家そ、それはないと思うな(汗)。
今日の一品 アールグレイ&ナッツクッキー

◎ 魔宝ファイル:1 <隠者/ハーミット>

【形態】
無数のマイクロマシン(ほぼあらゆる形態に変化可能)
【名前】
影浦(かげうら)/60代の老人,豊かな白髭が特徴的
【原型】
九浦義智(くうら・よしとも)/元工学助教授,後に某家の執事

【能力】
[マイクロマシン:隠密行動]
 情報収集/中心核を利用した所在探知/体内に虚数空間を作成
[影使い:隠密行動]
 影を媒介にした瞬間転移/闇の刃による攻撃

【性格】
主である魔術師に忠実――同時に唯一、魔術師に意見できる存在。
状況を正確に判断するため、冷静沈着。
魔宝である事を喜びに感じていると同時に、悲しみも抱いている。

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