電車に乗って、ぼーっとしながら、窓の外を眺めていると
「すみません。ここいいですか?」
という、お婆さまの声がします。
もちろん誰が来るわけでもありませんから、
「はい、どうぞ。」
ここで会ったのも何かの縁。と思って、
「どちらまでですか??」
と声をかけたところから異色の組み合わせ(?)の会話が始まりました。
おばあちゃんは、最愛のお爺ちゃんを8ヶ月前に亡くして、ストレス発散に行った帰りだったそうです。
「温泉行ってこようかな〜と思って、用意までみぃ〜んな持ってきたんだけど、止めて帰ってきたの。」
「温泉行って、お肌つるつるにならないと。」
「こんなしわしわな顔してるから駄目だわー」
「そんなことないですよぅ。」
「だめだめだめだめ。お婆ちゃん、あんまりにもしわしわだから、顔にアイロンかけようかと思って、近くまで持ってきたんだけど熱そうだからやめたの。」
それは、かけちゃいかんよ、お婆ちゃん!!
おばあちゃんの思い出話は、いろんなお話でした。
例えば……。
お婆ちゃんが、お義母さんに色々言われて、お手洗いで泣いてて。
でも、出てくるときには笑顔で出てきたんだって。
それをお爺ちゃんに見られて、
「目が真っ赤だけど、どうしたんだ?」
「目に、ゴミが入ったのをこすったからかなぁ〜」
って、誤魔化そうとしたんだって。そしたら……
「お前の目に入るゴミは大きいなぁ……わしも我慢しとるから、お前も頑張れ。」
ドラマでは、見たり聞いたりする話だけど、実際にそうだった人から聞くと、重みが全然違います。
そうそう、てるよ〜、って言うのもありました。
毎日“てるよ”って、言ってたんだよ。
「雨降ってるけど、てるよ♪」
この「てるよ」っていうのは、「愛してるよ」なんだって。
子供達の前で「愛してるよ」って言ってると、
「まったくもう!」
と言われてしまうから“てるよ”しか言わないんだって。
お婆ちゃんは「愛」っていう言葉が一番好きなんだって。
私の名前を良い名前だって誉めてくれたんだ。
そして、最後に――。
「私は今日とっても嬉しかった。良いあいちゃんに出逢えたから。」
って、仰って下さいました。
お婆ちゃん、私、すごく嬉しかったよ。
くしゃくしゃに泣けてしまうほど……
「私が、今日あいちゃんに出逢えたことで、何かあいちゃんの心に感じるものがあれば、私はそれで嬉しい。」
といって微笑んで下さった後、
「いい? 『人生、山あり谷あり』だよ。忘れちゃ駄目だよ……」
何度も諭すように私に告げて、お婆ちゃんは列車を降りて行かれました。
お話の中で、さらりと被爆なさったことを話して下さいましたが、その顔に刻まれたしわと、小さな、だけど真摯な瞳から、深刻さと、その時の苦労を、読みとることは容易でした。
その苦労がどんなものかは実際には分かりません。しかし、
「おじいちゃんはね、花マル♪」
と語る、お婆ちゃんは生きることの本当の意味を知っているように思えました。
お婆ちゃんが降りる、大浦の駅に着きました。
窓の外を眺め、ぼーっとしていると視界の片隅に手を振る笑顔が見えます。
そう、お婆ちゃん。
降りて駅の改札口とは逆なのに、わたしのいるところまでわざわざ歩いて手を振って下さったのです!!
「おばあちゃーーん!!」
両手を振って、笑顔に応えましたが、そのまま列車は発車していきます。
一期一会。
今のわたしにはまさしく、その通り、ただ一度しか会うことのない人とお会いし、お話しして……何かを学び取れたら、と思います。
そんなことを考えながら残り1時間が過ぎました。
(長崎駅 19:30)
長崎駅に着きました。……ホテルってどこ?? え? 大浦!?
「すみませ〜ん」
タクシーに乗る(笑)。
5分くらいでお宿に着きました。
どうやら、お婆ちゃんが降りた駅とは違ったらしい……(ほっ)
チェックインを済ませて、笑顔の本当に綺麗なお姉さんに部屋まで案内してもらいます。
部屋は狭いけれど、さっぱりしていてまぁまぁかな。
すぐに飛び出て右も左も分からないところで、スーパーを探し買い物(笑)
お茶とお菓子を買い込む、閉店2分前!(笑)
だって、ホテルの中って高いし。ざっと見たらお茶がないの!!
お風呂上がりに冷たいお茶〜〜〜!!
とりあえず、明日の予定を立てて、っと。
んーー。7:00には起きなきゃだな。
今日は早く寝とこーーっと。
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